新型コロナの影響・・・
(一人暮らしをしている)長女が、働いているお店が新型コロナ(緊急事態宣言)の影響で休業になったので、
一人で家にいるのは嫌だということで、こちら(実家)にころがりこんできました(すこし賑やかになっています)。
「休みで嬉しい」ようですが、喜んでいる場合じゃないよ、と思います。
法務局は職員を半減して業務をするということで、登記完了が遅くなっています。
日本政策金融公庫に、新型コロナの影響の売上減をカバーするための融資相談が多くなり、前から、新型コロナとは関係なく融資を受けようと思っていた方の審査が遅れたりしています。
ある特別養護老人ホームからのお知らせ
テレビ電話「スカイプ」による面会可能
ご入居者様とご家族様との間で、すこしでも顔の見えるコミュニケーションがとれるよう、スカイプを使用したテレビ電話による面会を開始しました。ということ
アプリをダウンロードすれば、スマホで可能とのこと
ここまでしてくれるところもある
さて、話は変わりますが、
1事例(単純化しています)
被相続人A(死亡した方)
相続人B(長男)
相続人C(二男)
相続人D(三男)
(亡)Aの遺産
自宅不動産(時価1000万円)の持分2分の1(残り2分の1は長男B名義)
預貯金・現金 400万円+わずかな現金
内訳
〇〇銀行〇〇支店の普通預金及び定期預金 200万円
△△銀行△△支店の普通預金及び定期預金 200万円
現金はわずか
借金(負債)500万円(この債権者 甲とします)
遺言あり
遺言の内容(特定遺贈)
自宅不動産(持分2分の1)を長男のBに「遺贈」する。
〇〇銀行〇〇支店の普通預金及び定期預金すべてを二男のCに「遺贈」する。
△△銀行△△支店の普通預金及び定期預金すべてを三男のDに「遺贈」する。
遺言執行者として長男のBを指定
「相続させる」ではなく、「遺贈する」となっています。
特定の財産を遺贈する、なので、「特定遺贈」になります。
相続人のBCD(相続人全員)は遺産に多額の借金(500万円)があるので、
BCDが相続放棄をし、次に相続人となる者も相続放棄をしたため、
「相続人不存在」となる。
1、BCDは相続放棄をして、相続人ではなくなった場合
遺言の「特定遺贈」はどうなるか?
回答
「特定遺贈」なので、相続放棄をして相続人でなくなったとしても、遺言の内容どおり、遺産(自宅、預貯金の積極財産)を引き継ぐことができます。
しかも、借金(負債)は相続人ではないので、引き継がないことになります。
これを考えると、多額の借金(消極財産)がある場合で、積極財産(不動産、預貯金)のみを子などの相続人に引き継がせたい場合は、「特定遺贈」をすればよいということになります。
相続人へ「特定遺贈」をしておいて積極財産は引継ぎ、同じ相続人が相続放棄(家庭裁判所へ申述)をすれば、借金を引き継ぐことはありません。
こんな、もらい得が許されるのか?
(なお、包括遺贈の場合(遺産全部とか、2分の1とかの割合的遺贈)は、負債も含まれ(相続人と同じ立場)、相続放棄(家庭裁判所へ申述)をして相続人でなくなったとしても、別途、包括遺贈の放棄(家庭裁判所へ申述)をしない限りは、借金(負債)も引き継ぐことになります。また、遺言が「遺贈する」ではなく、「相続させる」になっている場合は、相続放棄(家庭裁判所へ申述)をすると、相続人ではなくなり、この相続させるとなっている遺言も放棄したことになってしまいます)
2、それでは、相続債権者の甲はどうすればよいのか?
積極財産は特定遺贈で相続人(相続放棄をしているから相続人ではなくなっているが)のものとなり、消極財産である借金は(相続人不存在で)引き継ぐ者がいない。
このまま泣き寝入りしかないのか?
回答
債権者 甲としては、このような行為(特定遺贈と相続放棄)は、「信義則上」問題があるので、許されない、と主張したり、遺言者と受遺者で判ってやっていたのだろう、などとして詐害行為(債権者を不当に侵害する行為)として、取消を求めることが考えられます。
これが認められれば、このような遺贈を否定することができます。
また、「相続人不存在」となっていますので、家庭裁判所へ相続財産管理人の選任申立をすることが考えられます(相続財産管理人が選任された場合、遺産につき「相続財産管理人と遺言執行者の両者がいる」場合になります)。
そして、その手続きでは「受遺者」よりも「相続債権者(債権者の甲)」の方が優先するとされていますので、相続財産管理人に、遺産で負債を精算してもらうことが可能です。
しかし実際は・・・
「信義則」とか、「詐害行為」とか言っても、これを主張し争う場合、裁判は避けられないと思われるし(いろいろ主張、立証する必要が生じるし、認められないことも考えられる)、
また、高い予納金を出して、家庭裁判所に相続財産管理人選任申立をしたりすることがあるだろうか・・・
債権者の甲には、遺言者(債務者)の明確な財産状況や、どのような遺言がなされているのかなど、わからないことが多いと思います。ですから、このようなケースの場合、実際問題、難しい面があると思います。
このようなケースで着々と遺言執行が進められてしまうと、すぐに積極財産の遺産はBCDのものになってしまいます。遺贈による自宅の名義変更の登記依頼で、このような遺言書が司法書士に持ち込まれた場合、司法書士としては、借金があるのかどうか?とか、相続人不存在なのではないか?、などということはあまり検討せず、移転登記をすると思います(対抗問題もあり早く登記する必要性もあります)。
相続債権者の甲は、(遺言の内容はわからず、相続放棄をした旨の通知を受け相続人がいないと分かれば)多くの場合(特に貸金業者のような場合は)あきらめるのではないかと思われます。500万円の借金(負債)が例えば貸金業者10社、各50万円であれば、対費用効果の点でもあきらめると思います。
ケースによっては
遺言者の立場では、遺産に負債がある場合は、遺言は、(「相続させる」ではなく)「特定遺贈」で・・・
ということも言えるかもしれません・・・
遺言執行には(「清算型遺贈」などでなければ)限定承認や相続人不存在の相続財産管理人の手続のような、借金(負債)を清算するという機能はない(日本の相続は包括承継で、基本、清算という要素はない)。その他、実務上あまりないと言われていますが、財産分離(民法)、相続財産の破産(破産法)なんかがあります。
清算型遺贈(司法書士話題)1 - 司法書士とくの日記(ブログ)
清算型遺贈(司法書士話題)2 - 司法書士とくの日記(ブログ)
こんなのはちょっと・・・(相続) - 司法書士とくの日記(ブログ)