(つづき)
ポイントのみ
令和1年7月1日施行
7、特別寄与料
特別寄与分は相続人にのみ認められており、例えば夫の両親を療養看護してきた妻には、その夫の両親が亡くなっても、相続人ではないため、無償で療養看護してきた分につき遺産の分配を求めることはできなかった。
そこで、相続人ではなくても、
「被相続人の親族」で、「無償で療養看護その他の労務の提供」をし、「被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与」があった場合、相続人に対して、その寄与に応じた金銭の支払いを請求できる。とされた(1050条)。
相続人の特別寄与と異なり「財産上の給付」は含まれていない。
特別寄与料について協議が調わないとき、協議できないときは、家庭裁判所へ協議に代わる処分を請求できる。ただし、相続開始及び相続人を知った時から6か月経過、又は相続開始から1年経過(除斥期間)したときは、できなくなる。
施行日後に生じた相続につき適用
(この特別寄与料については、遺贈があったものとして相続税の対象になる)
令和2年4月1日施行(来年の施行)
1、配偶者居住権
賃借権類似の新しい法定債権
遺贈(死因贈与含む)、又は遺産分割、もしくは家庭裁判所の審判で成立
1028条~1036条
例えば、
夫が死亡、遺産が自宅(土地建物の評価3000万円)、預貯金1000万円
相続人は、妻と、別居独立している子あり
妻は自宅にそのまま住みたい、
今後の生活のために預貯金もできるだけ相続したい。ということで、
子が、妻(子の母)の生活を考え、「お母さんがすべて相続するでいいよ」ということであれば問題は生じない。
しかし、そうではなく、例えば、(遺言はなく)この子が妻の実子ではなく、(つきあいのなかった音信不通の)夫の婚姻前の別の女性との子(もしくは、いわゆる認知している愛人の子)で、その子は、不遇な生活をしてきて、
「法律で定められた法定相続分は、きちんともらいたい」
と言う(主張した)場合など
遺産は、自宅(土地建物の評価3000万円)、預貯金1000万円で合計4000万円
法定相続分は、妻は2分の1の2000万円、子も2分の1の2000万円
妻がこの自宅に引き続き住みたいということで、自宅を相続した場合
それだけで、妻の法定相続分は満たしており、
預貯金のすべてを夫の子が取得しても、
逆に妻は、夫の子に代償分割などで、1000万円支払う必要が生じてくる。
そこで、今回の改正で配偶者居住権という権利を新たにつくり、遺産分割協議などで、亡夫と妻が住んでいた自宅(土地建物)は、夫の子が相続(所有)するが、妻には、原則死ぬまで無償でその自宅に住んでいられる配偶者居住権というものを設定する。ことが可能となる。配偶者居住権を定めた場合は、その登記をすることになる。
例えば、仮に、自宅の評価(3000万円)につき、
妻の配偶者居住権の評価が1000万円
子の所有権の評価が2000万円(配偶者居住権が設定されている分、減額)
と計算された場合
妻は配偶者居住権(1000万円)と、預貯金の1000万円を相続することが可能となる。
話し合いがつかず、家庭裁判所に遺産分割の請求がされている場合で、配偶者(上記の例では妻)が配偶者居住権の取得を希望することを申出し、所有者(上記の例では夫の子が自宅を相続するとした場合の、夫の子)の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するため特に必要があると認められるときは、家庭裁判所の審判による配偶者居住権の取得も可能となっている(1029条)。
令和2年4月1日の施行日前に遺言で配偶者居住権の遺贈を定めても適用なし、施行日後の遺言に適用あり。
居住していた建物に、遺産分割が確定するまでなど、当面、住んでいられるという配偶者短期居住権も規定(1037条~1041条)
令和2年7月10日施行(来年の施行)
1、自筆証書遺言の法務局での保管制度
自筆証書遺言(ただし、保管のための様式が定められる予定)を法務局で保管してもらい、死亡後、法務局で相続人等が遺言書情報証明書の交付申請や、閲覧が可能。
家庭裁判所の検認が不要。ただし、相続開始後、遺言書情報証明書の交付を受ける際(閲覧の場合も)、(相続人全員に通知が必要なため)相続人全員が判る戸籍謄本等を法務局に提出する必要がある。公正証書遺言とのメリット・デメリットの判断必要。