司法書士とくの日記(ブログ)

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こんなのはちょっと・・・(相続)

ある方の相談

 

不動産の登記名義人である

被相続人 Aさん(20年以上前に死亡)

 

不動産は田舎にあるご自宅で、

(妻のBさん管理のもと)

妻のBさんが住んでいましたが、

このBさんも最近平成31年に死亡

(不動産の登記名義はAさんのままになっている)

 

このAさんと妻Bさんの間には子がなく、

(遺言もなく)兄弟姉妹が相続人になるケース。

 

今般、

この(亡)妻Bさんの相続人であるBさんの兄弟姉妹が全員相続放棄をして、

Aさんの相続人であるAさんの兄弟姉妹の一人に

相続放棄をしたから、この不動産の管理等はそちらにまかせる」

という通知をしてきました。

田舎の不動産で土地の地積は広くなく、家は(空家になっていますが)古くごみ屋敷状態、価値は高くありません(売却するとして買手がつくかどうか不明、売却できたとしても100万円未満か?)。

妻Bさんの兄弟姉妹が管理するのが負担なので全員相続放棄をして、Aさんの兄弟姉妹に押し付けてきた感じです。

 

その押し付けられたAさんの兄弟姉妹の一人から、

相続登記をして、できれば売却したいという相談。

 

よくよく話を聞くと、

Aさんの相続人は、

妻Bさんと、

Aさんの兄弟姉妹が5名

になります。

この兄弟姉妹の内、何人かは死亡しており、

甥姪や死亡の時期により兄弟姉妹の配偶者も

相続人になってきます。

死亡している兄弟姉妹の内、アメリカ国籍を取得し、

アメリカに在住していた方がいて、その子(ほとんど付き合いのない甥姪)も現在アメリカ国籍、アメリカ在住(らしい)・・・

さらに、ご存命の兄弟姉妹の内、高齢で認知症状のある方がいるようです。

成年後見人の選任が必要か?

この辺で手続きの困難さが予想され、憂鬱な気分になります。

 

そして、(亡)妻Bさんですが、

相談者の方(不動産を押し付けられたAさんの兄弟姉妹の一人)は

Bさんの相続人全員が相続放棄をしており、相続人がいないので、この妻Bさんは無視して(Aさんの兄弟姉妹関係だけで)相続登記の手続きはできると思っておられます。

 

・・・しかし、そうではありません。

 

この妻Bさんについて、「相続人不存在」ということであれば、

家庭裁判所で、このBさんについて「相続財産管理人」の選任が必要になります。

 

家庭裁判所で妻Bさんの相続財産管理人を選任してもらい(通常、弁護士が選任されます)、この相続財産管理人とともに遺産分割協議をすることになります。

相続財産管理人は、妻Bの法定相続分(4分の3)は権利を主張してきますし、

相続財産管理人選任の申立ての段階で、

家庭裁判所に納める予納金が通常50万円~100万円必要になります(裁判所や事案によって異なります。相続財産管理人はこの不動産だけでなくBさんの負債を含めて財産調査、相続人調査をして、場合により清算手続きまでしていきますので、その費用(相続財産管理人の報酬など)は結構かかります)。

この予納金は、(売却などにより)相続財産管理人が確保した妻Bの法定相続分から(後で)補填されることはありますが、

事前に、(売却できるかどうかにかかわらず)現金で必要になります。

 

相談者の方は、相続登記をして売却希望ですが、

おおきな費用負担はできないということ。

 

(Aの甥姪等が相続人になることも含め)

この辺の一般的な説明をしましたが、

(暗い顔で)

ちょっと検討してみますと言われ、帰られました・・・

 

この不動産「のみ」をなんとかしたい「だけ」なのに

成年後見人選任(後見開始)や相続財産管理人選任という重い手続きが必要になってくるなど、財産の価値に比べて手続き負担が重すぎます。

所有者不明の不動産になっていく事案かも・・・と思いました。

 

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2013-09-17