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代襲相続と相続放棄と養子縁組

代襲相続相続放棄と養子縁組



被相続人
B(Aの子)
C(Bの子)
とします。
(一応、他の相続人等はいないものとして)


<事例1(数次相続)>
被相続人Aが平成15年に死亡
B(Aの子)が平成16年に死亡
C(Bの子)
これは単純に
A→B→Cと数次相続になります。


<事例2(代襲相続)>
被相続人Aが平成15年に死亡
B(Aの子)が平成13年に死亡
C(Bの子)
BがAより先に死亡していた場合
これはA→Cへの代襲相続となります。
代襲相続の原因は、
BがAより先に死亡していた場合や、
Bが相続欠格、廃除されていて
Aの相続人にならない(相続権を失っている)場合で、
Cが代襲相続します。
A→C代襲相続


<事例3>
被相続人Aが平成15年に死亡
B(Aの子)が「Aの相続」につき相続放棄をした場合
C(Bの子)
Cが代襲相続することはありません。
相続放棄代襲相続の原因とはなりません。
代襲相続の原因は、前記のとおり
「死亡」「相続欠格」「廃除」になります。
したがって、Cは相続人にはなりませんので、
直系卑属の方(下)にはいかず)もしAに
(次順位の)直系尊属がいれば直系尊属(上)、
直系尊属がいなければ兄弟姉妹(横)が相続人
となっていきます。
A→×Cには相続されない


<事例4>
被相続人Aが平成15年に死亡
B(Aの子)が平成13年に死亡
(BはAより先に死亡)
C(Bの子)が「Bの相続」につき相続放棄をしている場合
この場合は、事例2と同様に
CがAの相続につき代襲相続します。
A→C代襲相続
CはBの相続につき相続放棄をしており、
Bの相続人ではなくなっていますが、
代襲相続の要件(民法887条)は、
被代襲者Bの「相続人」ではなく、
被代襲者Bの「子」となっていますので、
Cが代襲相続することになります。
親の相続につき相続放棄しているから関係ないと思っていたところ、
祖父母からの代襲相続については相続人になりますので注意が必要です。
(ただし、Aからの代襲相続についても相続放棄をすれば
相続人ではなくなります)
A→C代襲相続


<事例5(養子の子は代襲するか)>
被相続人Aが平成15年に死亡
B(Aの養子)が平成13年に死亡
C(Bの子)
BがAの養子であった場合
養子の子Cは、Aの相続につき代襲相続するかどうか?
代襲相続は、被相続人直系卑属であることが
要件となっています(民法887条)。
CはAの直系卑属といえるかどうか?
結論
これはCがいつ生まれたか、養子縁組の前か後かで異なってきます。
Cが、ABの養子縁組「前」に生まれている場合は、
CはAの直系卑属ではなく、したがって代襲相続はしません。
Cが、ABの養子縁組「後」に生まれている場合は、
CはAの直系卑属ですので、代襲相続します。
例えば、ABの養子縁組が平成2年
Cが平成元年に生まれている場合は、Cは代襲相続しません。
Cが平成3年に生まれている場合は、代襲相続することになります。
養子縁組前の養子の子は代襲相続しない。


養親Aと、養子Bの血族C(Bの子)との間には
親族関係は発生せず(民法727条の反対解釈)、
養子縁組「前」に出生していた養子の子は被相続人直系卑属ではないから
代襲相続することはできない(大判昭和7年5月11日)が、
養子縁組「後」に生まれた養子の子は、
養子を通じて、養親と血族間におけるのと同一の親族関係が生じ直系卑属となる。
(養子は縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得する
民法809条。養子は実子と同じ親族))
とされています。
ABの養子縁組「前」に生まれたCは、民法727条の反対解釈で、
A(養親)と、B(養子)の血族(C)との間には親族関係が発生しないので、
Aの直系卑属にはなりませんが、
ABの養子縁組「後」に生まれたCは、
BがAの嫡出子としての身分を取得した後に生まれているので、
Aとの関係でも血族間におけるのと同一の親族関係が生じ直系卑属
となるということになります。
A→C(AB養子縁組「後」に生まれた子)代襲相続


ただし、Cが養子縁組「前」に生まれた子であっても、
例えば、Cは養子(父)の子だが、母がAの実子の場合など、
Aから(母ルートで)見ると直系卑属であれば、代襲相続します。
A(祖父母)
B(Aの養子)
Cが、B(父)とAの実子(母)との間の子である場合
Cが、ABの養子縁組「前」に生まれた子であっても、
母ルートで見ると直系卑属にあたるので、
A→C代襲相続することになります(判例平成1年08月10日大阪高等裁判所)。


<事例6>
被相続人Aが平成15年に死亡
B(Aの子)が平成13年に死亡
C(Bの養子)
BはAの実子
CはBの養子
これは、Aの相続につき、
Cは代襲相続することになります。
A→C代襲相続
養子は、縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得する(民法809条)
養子(C)と、養親(B)及びその血族(A)との間においては、
養子縁組の日から血族間におけるのと同一の親族関係を生じる(民法727条)。


<事例7>
被相続人Aが平成15年に死亡
B(Aの養子)が平成13年に死亡
C(Bの養子)
BはAの養子
CはBの養子
これは事例5と同様に考えると、
次のようになると思います。
例えば、ABの養子縁組が平成2年
BCの養子縁組が平成元年の場合は、Cは代襲相続しない。
BCが平成3年に養子縁組している場合は、代襲相続する
ことになります。
BCの養子縁組時期がABの養子縁組「前」の場合、
代襲相続しない。
Cの「出生時期」(事例5)と、
BCの「養子縁組時期」を同じように考える。


養親Aと、養子Bの法定血族C(Bの養子)との間には
親族関係は発生せず(民法727条の反対解釈)、
養子縁組「前」に縁組していた養子の養子は被相続人直系卑属ではないから
代襲相続することはできないが、
養子は、縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得し(民法809条。養子は実子と同じ親族)、
養子縁組「後」に縁組した養子の養子は、(養子を通じて)
養親と血族間におけるのと同一の親族関係が生じ直系卑属となる。
となると思います。
(ややこしいです)


(余談)
ただ、事例5(もしくは事例7)で、
Cの登場が、ABの養子縁組の前か後かで
Aの代襲相続につき結論が異なるのは、
その合理的な理由がないように思えて
すっきりしません。
ABの養子縁組(平成2年)の前にCが登場する場合
(Cの出生や、BCの養子縁組が平成元年の場合)、
Cが出生した時点やBCが養子縁組した時点(平成元年)では、
AはBの(法定)血族ではない。
その後、ABが養子縁組、AB法定血族となる。
CがBの嫡出子(子)としての身分を取得した後に、
AがBの養親となっている関係を
どうとらえるか?
ABが養子縁組した時点でCの存在はあるのだから、
むしろAの意識としては、Bが先に死亡したら、
代襲相続するというものなのではないだろうか。
民法727条の反対解釈だけでいけるのか?
ABの養子縁組の際に、すでにBの子となっているCが、
代襲相続しないとする合理的な理由はないように思えるが・・・



(再代襲)
代襲するはずの子がすでに死亡している場合は、
(その子に子がいれば)再代襲となります(民法887条3項)。
しかし、兄弟姉妹の子(甥や姪)の代襲につき、
その子(甥や姪)がすでに死亡している場合については、
再代襲はありません(民法889条2項で887条の3項の準用なし。
ただし昭和56年1月1日以降〜の相続につき)。甥姪まででストップ。


(数次相続と代襲相続
http://d.hatena.ne.jp/tokucyan-siho/20180315
(旧民法(〜現行民法)での相続について)
http://www.amy.hi-ho.ne.jp/sakai-siho/kyuminnpou.htm



相続人が兄弟姉妹の場合で、
その兄弟姉妹が養子の場合の代襲について
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