司法書士とくの日記(ブログ)

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妻が妹(夫が兄)?

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前の「なにわ淀川マラソン」参加の後、3日間ぐらい腕が日焼けでヒリヒリしてお風呂に浸けることができませんでした。今は皮が剥けてボロボロになっています。

走っている途中で、目が痛くなり、その後、頭も痛くなってきました(おそらく紫外線にやられたのだと思います)。脚の痛みもありましたが、クラクラし始めたので、これ以上走るとやばいと思い、30キロ地点から歩きに切り替えました。私はウェーブスタート(最後の)第5グループで、その集団が(当初から)キロ6分30秒ぐらいのペース。すこしペースが遅いと思いましたが(追い抜いたり、一人で走るのは嫌なので)その集団でペースを刻みました。ゆっくりペースで走り、30キロで歩きが入りましたので、ゴールタイムは5時間11分になりました(撃沈)・・・

撃沈したなにわ淀川マラソンですが、川内優輝選手や有名なユーチューバーの方々が見れてよかったです(優勝はくれいじーかろさんというユーチューバーの方で賞金100万円をゲットされました)。

 

さて、話は(まったく)変わって・・・

子がない夫婦で、

妻が亡くなり相続が発生しました。

 

亡妻の相続人は、子(直系卑属)がおらず、

妻の両親、祖父母はすでに亡くなっている(直系尊属は先に亡くなっている)場合、

「配偶者の夫」と「亡妻の兄弟姉妹」になります。

 

今回、遭遇したケースは、

配偶者の夫が、妻の両親の養子になっています。

配偶者の夫が、妻の両親の養子(婿養子)になっている場合、(養子は、妻の両親の実の子と同じ立場になりますので)亡妻から見ると、夫は(年上の場合)兄に当たることになります。

養子の夫から見ると、妻は妹になります。

ですから、亡妻の相続人の立場としては、夫は、「配偶者としての立場(資格)」と、「兄弟姉妹の兄としての立場(資格)」があることになります。

このケースで、このような相続人の二重資格が認められるのかどうか?

 

祖父母が孫を養子にしていて、その祖父母が亡くなった場合

その孫が代襲相続人の地位もある場合は、二重資格は認められるとされています。

祖父母

祖父母の子A

Aの子 B(祖父母から見ると孫)

祖父母が孫のBを養子としていた。

祖父母の子A(Bの親)が先に亡くなり、その後、祖父母が亡くなった場合

祖父母の相続人としては、Bは、「養子の地位」と、(祖父母より先になくなったAの)「代襲相続人の地位」があることになります。この二重資格は認められています。

 

しかし、このケース(配偶者と兄弟姉妹の地位)については、先例で「配偶者としての立場(資格)」と、「兄弟姉妹の兄としての立場(資格)」の二重資格は認められず、配偶者の地位のみが認められるとされています。

先例 昭和23年8月9日民事甲第2371号民事局長回答

(要旨) 長女と婚姻した養子が死亡し、その直系卑属及び直系尊属がない場合には、妻たる長女は、配偶者としての相続分のみを取得し、兄弟姉妹としての相続分は取得できない。

 

これに基づいて「配偶者としての夫の地位のみ」として、法定相続分の計算、相続税申告などはなされます。

法定相続情報一覧図についても、これに基づいて「配偶者の地位のみ」として作成することになります。

 

・・・と書いた後で次の先例があることがわかりました。

ただし、兄弟姉妹としての地位を認めた次の先例(通知)があります。

平成27.9.2民二363民事局民事第二課長通知・民月71巻3号72頁

被相続人甲の妻及び妹としての相続人の資格を併有する乙から(甲乙は共に亡養母の養子)、相続を証する情報として、戸籍(除)謄本及び相続放棄申述受理証明書のほか、配偶者として相続放棄をしたことを確認できる相続放棄申述書の謄本及び妹としては相続放棄をしていない旨の上申書を提供された相続登記の申請につき、これを受理して差し支えない。」

これは、「配偶者としての立場(資格)」と、「兄弟姉妹としての立場(資格)」の二重資格を認めることを前提にしたものになります。

ずばりではありませんが、先の先例(昭和23年8月9日民事甲第2371号民事局長回答)を変更したものといわれています(新訂設問解説 相続法と登記P.30 日本加除出版)。

相続放棄では、どの相続人の資格(立場)で相続放棄をしているか確認できる場合は、それぞれの資格(立場)での相続放棄を認め(選択可)、確認できない場合(どちらの資格(立場)で相続放棄をしたか不明な場合)は両方の資格で相続放棄をしている(こちらが原則)、と判断されているようです(相続放棄する場合の多くが負債(借金)を相続したくない(この被相続人からの相続はしたくない)というのがあるので、この判断は合理的だと思います)。相続放棄申述受理通知書や相続放棄申述受理証明書には被相続人との関係・続柄の記載はなく、それらを添付して相続登記申請をした場合は、(原則)両方の資格で相続放棄をしているとして登記処理はなされます(なお、相続放棄申述の申立てをする際には被相続人との関係・続柄は記載するようにはなっています)。

このように相続放棄との関係では二重資格を認めるが(両方の資格で放棄しているとするのが原則だが、どちらか選択も可)、しかし、先の先例(昭和23年8月9日民事甲第2371号民事局長回答)については変更されたとまではいえず、配偶者と兄弟姉妹の(二重)地位・資格について、(相続放棄の場面とは異なり)他に兄弟姉妹がいて相続権を主張するような場面においては、その相続人との関係では、配偶者の地位のみ主張できる、と考えることもできるのではないかと思ったりもします。

平成27.9.2民二363民事局民事第二課長通知・民月71巻3号72頁は、相続人不存在となる状態を防ぐという意味で重要な先例になります。

実母が養母? - 司法書士とくの日記(ブログ)