司法書士とくの日記(ブログ)

司法書士業務、マラソン、その他

相続放棄をしても受け取れるもの

私が成年後見人をしていた方で
債務超過でお亡くなりになった方がいます。
現金預貯金は(死後事務の精算の結果)0円です。


相続人の方(直系卑属の子ら)へ
財産目録や収支等を報告通知したところ、
相続放棄をされました。
そして、次の相続人は兄弟姉妹になりましたので、
相続人の兄弟姉妹(全員ご存命)へ報告通知をしたところ
全員が相続放棄をされ、相続人不存在になりました。


負債(借金等)はあっても、
現金預貯金(積極財産)はないので、
相続人不存在といっても、
相続財産管理人の選任申立まではしません。
残っているのは、
・未支給年金
・高額療養費の支給
介護保険料の還付金
後期高齢者医療保険の葬祭費
になります。
債務超過でしたので、これらのお金が
預貯金口座に入って複雑にならないよう、
死亡後すぐに口座は凍結しました)


これらは、相続放棄をした相続人から
請求できる(受け取れる)でしょうか?


・未支給年金(〇受け取れる)
これは生計同一の遺族が固有の権利として
請求するものなので相続放棄をしても請求することができます。
しかし、今回、生計同一の遺族はおられませんでしたので、
請求権者はなしになっています。
前ブログ
http://d.hatena.ne.jp/tokucyan-siho/20140116
なお、請求できる遺族がおられる場合で、
亡くなった方名義の口座に入金されてしまった
未支給年金を出金して受け取るのは、相続放棄との関係では
口座からの出金として単純承認したとの疑いをもたれるかも
しれませんので、口座凍結した上、権利者の遺族自ら
請求するのが望ましいと思われます。
*未支給年金
例えば、5月にお亡くなりになった場合、
死亡後の6月15日に支給される年金は、
4月5月分の年金で(年金は後払い)、本来受け取ることができる
年金になりますが、死亡後は受け取る方がいませんので
(ただし届出等が間に合わず預金口座に入ってしまうことはあります)、
生計を同じくしていた一定の遺族が請求をすれば受け取ることができる
ようになっています。これを未支給年金といいます。
(生計同一の認定要件は、配偶者と子の場合と、それ以外の場合で
少し異なっています)


・高額療養費の支給(×受け取れない)
これはお亡くなりになった方への支給で、
相続財産になりますので、相続放棄をした場合
請求はできなくなります。
高額介護サービス費についても同様
(ただし、後期高齢者医療保険ではなく、
国民健康保険の場合は、世帯主に受取る権利が
ありますので、お亡くなりになった方が
世帯主でない場合は、世帯主が相続人として
相続放棄をしていても、その世帯主が受取れると思います)


介護保険料の還付金(×受け取れない)
これは相続財産になりますので、相続放棄をした場合
請求はできなくなります。
後期高齢者医療保険保険料の還付についても同様


後期高齢者医療保険の葬祭費(〇受け取れる)
これは葬儀を主催した(行った)喪主等に支給されるものなので、
相続放棄をしても葬儀を主催していれば受け取ることができます。
通常、葬儀費用の領収書のあて名人(喪主等)に支給されます。


すべて請求(申請)する必要があります。


その他問題となるものとして、
・死亡保険金(〇受け取れる)
これは受取人になっていれば、固有の権利がありますので、
相続放棄をしても請求することができます。
ただし、入院傷病保険の手術入院給付金、通院給付金等で
受取人が「亡くなった本人」になっている場合は、
相続放棄をすると請求できなくなります。


・遺族年金、死亡一時金(〇受け取れる)
・死亡退職金(△受け取れる場合が多い。
ただし、会社員の場合、その会社の規定による)


相続放棄をするケースで)
相続放棄をした相続人は受け取れない
となっているものを請求して受取ってしまった場合、
単純承認とみなされ相続放棄できなくなってしまう
可能性があるので注意が必要です。