日本人の場合、相続人が誰であるかは(通常は)戸籍調査で判明します。
ただし、相続放棄をしたかどうかは戸籍には記載されませんので、家庭裁判所発行の相続放棄申述受理証明書か、相続放棄申述受理通知書で確認することになります。
それらの証明書や通知書がない場合は、亡くなられた被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ、相続放棄されているかどうか照会をかけます(できるのは相続人等の利害関係人に限られますが)。そして、相続放棄申述がなされていることが判明すれば、その家庭裁判所で、相続放棄申述受理証明書を発行してもらうことができます。
こんな事例があります。
被相続人A(平成元年に亡くなられた方)
配偶者は先に亡くなっている
子が3名いましたが、その内、一人が相続放棄(家庭裁判所へ申述)
子BCDの3名、Bが相続放棄
結局、相続人はCDの2名となる。
負債(借金等)はありませんでしたが、Bは実家と関わりたくないということで(きちんと3カ月以内に)相続放棄をしていました。
実家を引き継いだのは、C
そして、月日は流れ・・・
今般、被相続人A名義のままになっている不動産があり、Cが相続登記を希望
Aは前記のとおり平成元年に亡くなられていますが、現在まで相続登記をせずにA名義のままになっている不動産がありました。
あらためて相続人を調査すると、CとDはご存命
相続放棄をしたBは令和2年に亡くなられていて、(亡)Bには妻と子三人がいます。
Bは相続放棄をしたということで、その書類の存否を確認しましたが、ありません。
Bの妻には連絡が取れたので、尋ねてみると、やはり相続放棄の書類はないということ。
このような場合、家庭裁判所に照会をかけて、相続放棄申述受理証明書を取得すればよい、ということになりそうだが・・・
家庭裁判所曰く、「平成3年より前のものは確認できません。よって仮に相続放棄申述受理がなされていたとしても証明書発行はできません」とのこと
家庭裁判所での書類の保存期間が30年になっているので、家庭裁判所に資料が残っていないということ
ということは、相続放棄したことが証明できないので、Bの相続人(Aからの数次相続、順次相続)であるBの妻と子三人の協力がないと相続登記はできないことになります。
BやBの妻は、Bの実家とは折り合いが悪かったようで、
Bの妻は、亡夫Bの親族との関わりを嫌い市役所に「姻族関係終了の届出」(戸籍に記載あり)をしていました。
Bの妻曰く「亡夫Bは(Aの相続について)相続放棄をしているし、私も役所へ届出(姻族関係終了)をしているので、私は関係がない。一切協力はできないので連絡しないでほしい」
さらに、Bの子の一人は海外在住で連絡がとれず・・・
(なお、姻族関係終了の届出は、夫の親族(夫の両親、兄弟姉妹など)との関係はなくなりますが、夫の相続人としての地位は失いません)
ということで、これは、相続登記をすることが(とても)困難な状態になってしまったという事例になります。
後日談
相続登記ができないと困るので、Cは実家を(くまなく)家探したところ、当時(平成元年)の、(預貯金などの相続で使った)相続放棄申述受理証明書が見つかりました。これで、亡Bの妻や子の協力がなくても相続登記ができる、と喜びましたが、(なんと)Dが(病で)急死してしまいました。Dには子がありませんでしたので、(兄弟姉妹が相続となり)Dの相続人は、Cと、亡Bの子が代襲相続人となりました。Bの妻は関係なくなりましたが、結局、Bの子の協力は必要で、相続登記をすることが困難な状態は変わりませんでした。
(どこかのフレーズではありませんが)相続登記はお早めに・・・