民法の相続法の改正で、夫婦間の居住用不動産の贈与については、(遺産分割の際)特別受益に含めずに計算できたり、遺留分の算定について、(相続開始時の)10年より前にした相続人への贈与(特別受益)は算定に含めないなど、定められました。この10年より前にした相続人への贈与(特別受益)は算定に含めないというのは、遺留分の算定についてのことで、遺産分割する際の特別受益については、10年より前のものでも含めて計算します。
(事例が単純な)1例
被相続人A
相続人B(長男)
相続人C(二男)
死亡時の遺産 1000万円
生前、Aから長男Bへ600万円の贈与あり
遺言がなく、遺産分割する場合、具体的な法定相続分は?
生前のAから長男Bへの600万円の贈与を特別受益とした場合
(Aの持ち戻し免除の意思はないとして)
生前贈与の600万円を持ち戻して計算
遺産 1000万円+特別受益の600万円=1600万円
Bの相続分 1600万円×2分の1(法定相続)=800万円-600万円=200万円
Cの相続分 1600万円×2分の1(法定相続)=800万円
贈与の時期は関係がない。
Aに持ち戻しはしないという意思がある場合は持ち戻しはしない。
民法903条
すべての財産をBへという遺言がある場合
Cの遺留分の侵害
600万円の贈与が(相続開始前)10年以内のものであれば、加算して算定
1000万円+600万円=1600万円
Cの遺留分は、4分の1
1600万円×4分の1=400万円(遺留分侵害額)
CはBへ400万円請求できる。
600万円の贈与が(相続開始前)10年を超える場合、(原則)加算しない
1000万円×4分の1=250万円(遺留分侵害額)
CはBへ250万円請求できる。
ただし、AB双方がCの遺留分侵害(Cの損害)を知って贈与している場合は600万円加算できる。
民法1044条
遺留分を算定するための財産の価額に含めるかどうか 相続人に対する贈与については、相続開始前の10年間にしたものに限る(相続人以外は1年)
遺言者の意思は関係がない(遺留分権利は、被相続人の意思によっても変更できない権利。被相続人の生前に、権利者自ら遺留分放棄する場合でも家庭裁判所の許可が必要)。