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買戻し特約の抹消登記について(令和5年4月1日施行の不動産登記法改正)

司法書士ねた

買戻し特約の抹消登記について

令和5年4月1日施行不動産登記法改正

 

新設

「(買戻しの特約に関する登記の抹消)

不動産登記法第69条の2

買戻しの特約に関する登記がされている場合において、契約の日から10年を経過したときは、第60条の規定にかかわらず、登記権利者は単独で当該登記の抹消を申請することができる。」

 

第60条は(原則の)共同申請の規定になります。

 

今回、このように不動産登記法の改正で、契約の日から10年を経過しているときは、登記権利者(所有者)の単独申請で買戻特約登記の抹消登記を申請することができるようになりました。

買戻し特約については、期間は10年を超えることができず、期間を定めた場合でも伸長はできないとされていますので、10年を経過した買戻し特約は実行されず、消滅している可能性が高いので、このような規定が設けられました。

登記義務者である買戻権者の所在不明などは要件となっておらず、公示催告の手続きは不要になります。

要件は、「契約の日から10年経過」のみです。

登記原因は、「不動産登記法第69条の2の規定による抹消」になります(日付不要)。

なんと、登記原因証明情報も不要となっています。とすると、添付書類は登記権利者の委任状のみ。

 

買戻し特約の登記については、兵庫県住宅供給公社などの公社、公団や、独立行政法人都市再生機構の買戻特約の登記が抹消されずに残っていることはよくあります(日本鉄道共済組合の買戻し特約を抹消したこともあります)。

この住宅供給公社や都市再生機構の買戻特約登記については、連絡をすれば、すぐに抹消に必要な書類は送付してもらえますので、抹消で苦労するということはありませんが、このような場合でも、不動産登記法第69条の2の登記権利者単独申請の要件は、「契約の日から10年経過」のみですので、適用があります。

 

兵庫県住宅供給公社からは次のような案内があります。

「買戻し登記抹消手続きについて。不動産登記法改正に伴い、令和5年4月以降、契約の日から10年を経過している場合は、登記権利者が単独で買戻し特約登記の抹消を申請できることになりましたので、 令和5年4月以降は、契約の日から10年を経過していない場合のみ、公社までご連絡ください。」10年を経過している場合は公社に連絡することなく、(勝手に)抹消してね、という案内です。

ただし、都市再生機構の場合は、前の住宅・都市整備公団都市基盤整備公団の名のままで登記されている場合(承継による移転登記がなされていない場合)、このままで抹消登記ができるのかどうかはよくわかりません。もしかして(都市再生機構の嘱託等で)承継による移転登記が必要になるのではないか?と思われたり、単独申請が認められた趣旨からすると不要な気もしますが、どうでしょうか?(都市再生機構の場合は、承継が周知の事実のような感じですが、そうでない場合は調べないと登記官にはわかりませんし・・・)。(下記追のように)抹消の原因日付によって異なってくるので、ケースによっては共同申請で、となるかもしれません(特に抵当権といっしょに抹消登記をする場合など)?それとも買戻し特約については、共同申請の場合、都市再生機構の実印押印などが必要となるので、できるだけ権利者単独申請で、となるかも・・・

なお、この登記権利者単独申請で買戻し特約が抹消された場合は、登記義務者である買戻し権者あて(登記記録上の住所あて)に、法務局から、登記がなされました旨の通知が発送されます。もし、都市基盤整備公団のままでもできるとすると、それ宛に発送されることになります。

ちなみに、申請人が法人である場合は、会社法人等番号や代表者の資格、氏名を申請書に記載しますが、登記義務者であっても申請人でない場合は記載しません(不動産登記令3条、7条)。

追・・・一応、現時点の私の結論としては、前の住宅・都市整備公団都市基盤整備公団の名のままでも、この単独申請での抹消登記ができる、となります。そうでないと、この規定を設けた意味が半減するからです。

前の住宅・都市整備公団都市基盤整備公団の名のままでも、この単独申請での抹消登記ができました。

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参考まで - 司法書士とくの日記(ブログ)

 

独立法人都市再生機構(UR)について

平成11101日、住宅・都市整備公団が、都市基盤整備公団法附則第6条第1項により、都市基盤整備公団へ承継。

平成1671日、都市基盤整備公団が、独立行政法人都市再生機構法附則第4条第1項により、独立行政法人都市再生機構へ承継。

買戻特約や抵当権の抹消日付が、その承継日以降の場合、承継による移転登記(嘱託による)の上、抹消登記をする。

買戻特約や抵当権の抹消日付が、その承継日より前の場合、承継による移転登記をせずに、そのまま承継者として抹消登記申請をすることができる。

敷地権表示されていないマンションに登記されている買戻特約登記は、敷地権表示される際に建物へ一体化されないため、土地と建物、別々の登記として生きています。したがって、この買戻特約を抹消する場合は、土地については、敷地権としてではなく、独立した土地について抹消登記申請をすることになります。敷地権表示された以降に登記された買戻し特約は、このようなことはなく、一体化された建物に登記されています。なお、抵当権は、通常、土地・建物とも、原因や受付年月日、受付番号などが同じであるから、敷地権表示される際、建物へ一体化される。