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株式会社と一般社団法人の違いについてのメモ(主に設立手続面)

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株式会社と一般社団法人の違いについてのメモ(主に設立手続面)

設立手続については、株式会社も一般社団法人も公証人の定款認証が必要で、似ています。

商号=名称

本店=主たる事務所

株主=社員

取締役=理事

代表取締役代表理事

監査役=監事

と考えれば判り易いです。

 

定款の絶対的記載事項等について次のような相違があります。

株式会社の定款の絶対的記載事項

・目的

・商号

・本店の所在地

・会社の設立に際して出資される財産の価額またはその最低額

・発起人の氏名または名称および住所

その他、通常、発行可能株式総数は定款で定めます。

 

一般社団法人の定款の絶対的記載事項

・目的

・名称

・主たる事務所の所在地

・設立時社員の氏名又は名称

・社員の資格の得喪に関する規定

・公告方法

・事業年度

公告方法や事業年度が定款の絶対的記載事項になっています。もっとも株式会社の場合でも、これらは通常、定款で定めます。

 

一般社団法人の公告方法は、次の4種類のものが認められています(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第331条1項)。

①官報に掲載する方法

②時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法

③電子公告

④不特定多数の者が公告すべき内容である情報を認識することができる状態に置く措置として法務省令で定める方法

上記の法務省令で定める方法は、「主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示する方法」になります。

株式会社と異なり、④が認められています。

公告をする方法 - 司法書士とくの日記(ブログ)

 

資本金

株式会社については、出資が必要で、資本金の額が定められますが、一般社団法人は、そのようなものは必須となっていません。ですから一般社団法人は、登記事項に資本金の額はありません。

株式会社は、設立の際、発起人は出資が必要で、出資をした人は株主になります。

一般社団法人は、社員は(特に取り決めがなければ)出資をしなくてもかまいません(ただし、入会金や会費の取り決めをしたり、基金の制度をつくることはできます)。

 

理事、監事の任期

一般社団法人の理事の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとされ(定款又は社員総会の決議によって、その任期を短縮することができます。)、監事の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとされています(定款によって、その任期を選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとすることを限度として短縮することができます。)。

株式会社(株式譲渡制限のある非公開株式会社)のように10年に延長することはできません。ですから、一般社団法人の場合は、2年ごとに役員の登記が必要になります。

 

定款認証の際の実質的支配者の申告

実質的支配者はだれか?

一般社団法人の場合

① 出資、融資、取引その他の関係を通じて事業活動に支配的な影響力を有すると認められる自然人全員

② 上記①がいない場合、設立する法人の代表者(代表理事

②になる場合で、定款では代表理事が判らない場合、別途、代表理事の選任書の提出が必要となったりします。

実質的支配者の申告(発起人が株式会社の場合) - 司法書士とくの日記(ブログ)

 

登記の添付書類として、理事や監事について「本人確認証明書」が必要なのは株式会社と同じになります。

商業登記の際に添付する「本人確認証明書」 - 司法書士とくの日記(ブログ)

 

設立登記の登録免許税は、

株式会社の場合、最低15万円(資本金の額の1000分の7)

一般社団法人の場合、一律6万円

合同会社は、最低6万円。資本金の額の1000分の7)

特定創業支援 - 司法書士とくの日記(ブログ)

 

一般社団法人については、税務上の取扱いの相違で、次の区別があります(法人税法上の区別)。

「普通型」(非営利型でないという意味)と「非営利型」

どちらも社員に剰余金の配当ができない非営利の一般社団法人ではありますが、次の「非営利型」の要件を(実質的に)満たせば、税務上(税法上)、「収益事業のみに課税」となります(税務上のメリットがある)。

非営利型は次の2つがあります(どちらか要件を満たせば、非営利型になります)。

1、非営利徹底型

① 剰余金の分配を行わないことを定款に定めていること

② 解散したときは、残余財産を国・地方公共団体公益法人等一定の公益的な団体に贈与することを定款に定めていること

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律では、社員に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めは、その効力を生じない(11条2項)、また、社員総会は、社員に剰余金を分配する旨の決議はできない(35条3項)とあるが、逆にいえば、社員以外には可能で、また、残余財産の分配については、社員総会で決議できる、となってしまう。①と②は、それすらも禁止している法人ということ。

③ 上記①および②の定款の定めに違反する行為(上記①②及び下記④の要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを含む)を行うことを決定し、または行ったことがないこと

④ 各理事について、理事とその理事の親族等*である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること

*理事等(その理事と特殊な関係にある者)

ⅰ その理事の配偶者
ⅱ その理事の3親等以内の親族
ⅲ その理事と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
ⅳ その理事の使用人
ⅴ ⅰ~ⅳ以外の者でその理事から受ける金銭その他の資産によって生計を維持している者
ⅵ ⅲ~ⅴの者と生計を一にするこれらの者の配偶者又は3親等以内の親族

理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であることが必要なので、非営利型の一般社団法人にするためには、理事の人数は3名以上必要になります。

理事の総数の3分の1以下が必要なので、例えば、理事ABCDEFと6名いて、はじめて、AとBが親族等でもOKになります。このように理事の総数が6名の場合は、親族等が1名だけ理事になることができますが、理事総数が5名以下の場合は、親族等は一人も理事になれません。これは厳しい要件になります。

定款では次のような感じで定めます。

「この法人は剰余金の分配を行うことができない。」

「この法人が清算するときに有する残余財産は、社員総会の決議により、国若しくは地方公共団体又は公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律第5条第17号に掲げる法人に贈与する。」

定款の規定までは要求されていませんが、次のような規定を入れてもよいかと思います。「各理事について、理事とその理事の配偶者又は三親等内の親族その他法令で定める特別の関係である理事の合計数は、理事総数の3分の1を超えてはならない。」

①から④すべてを満たすことが必要です。

 

2、共益的活動目的型

共益的活動目的型の一般社団法人は、主に会員からの会費収入によって活動し、会員に共通する利益を得るために活動する組織になります。

① 会員に共通する利益を図る活動を行うことを目的としていること

② 定款等に会費の定めがあること

③ 主たる事業として収益事業を行っていないこと

④ 定款に、特定の個人または団体に剰余金の分配を行うことを定めていないこと

⑤ 解散したときに、残余財産を特定の個人または団体(国・地方公共団体公益法人等を除く)に帰属させることを定款に定めていないこと

⑥ 上記①から⑤まで及び下記⑦の要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを決定し、又は与えたことがないこと。

⑦ 各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること

①から⑦すべてを満たすことが必要です。