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実質的支配者の申告(発起人が株式会社の場合)

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最近あげている細かい司法書士ネタは、過去のボツネタが多くなっています(あまりにも細かいのでボツにしていましたが、あえて投稿)。

 

さて、

株式会社一般社団法人、一般財団法人を設立する際、

公証人役場で定款認証するときに、

公証人に対して、その法人の「実質的支配者」の住居、氏名、生年月日等と、その者が暴力団員や国際テロリストに該当するか否かの申告が必要となっています。

これは、法人の実質的支配者を把握することにより、法人の透明性を高め、暴力団員等による法人の不正使用、マネーロンダリングやテロの資金供与等を抑止することを目的とするもので、国内外からの要請に基づくものであるとされています。

これは、普段、司法書士が関与している(巷の)会社設立からみると、とても仰々しいものに感じます。

 

実質的支配者とは?

株式会社の場合

① 設立する会社の議決権の直接保有及び間接保有が50%を超える自然人

② 上記①がいない場合、議決権の直接保有及び間接保有が25%を超える自然人全員

③ 上記①②がいない場合、出資、融資、取引その他の関係を通じて事業活動に支配的な影響力を有すると認められる自然人全員

④ 上記①②③がいない場合、設立する株式会社の代表取締役

上場企業及びその子会社は自然人とみなされます。

①②に該当しても、当該法人の事業経営を実質的に支配する意思又は能力を有していないことが明らかな者は除かれます(形だけの出資者など)。

③は、例えば、法人の意思決定に支配的な影響力を有することができる程度の大口の取引予定先、法人の意思決定に支配的な影響力を行使できる程度の機関構成員を自社から派遣している上場企業、法人の代表権を有する者に対して支配的な影響力を行使することができるような関係を有する自然人などを指します。

出資、融資、取引とあるので、主にお金で支配している者を指しているように思われます。「実質」というからには、この③や「実質的に支配する意思又は能力を有していないことが明らかな者は除く」が重要なのではないかと思いますが、ある意味①②の、形式で判断されているように思います。

やむを得ない理由から①②を把握できない場合は、③④を検討

 

間接保有とは何なのか。日本公証人連合会のパンフレットによると「自然人の支配法人(当該自然人が50%を超える議決権を有する法人)が発起人となり、設立会社に出資して株式を保有すること」と定義されています。

 

 これまで、(発起設立で)発起人が一人(自然人)とか、二人(自然人)いて、そのうち一人が50%超の出資をしているなどの間接保有もなしの①ばかりで問題意識が薄かった。

 

今回、株式会社(法人)が発起人となった。

 

具体例

設立会社 A株式会社

発起人 B株式会社(上場企業ではない)が100%出資の場合

 

B株式会社の株主名簿を提出してもらい、B株式会社の株主を調べる。

 

例1

発起人B株式会社の株主

自然人 甲 議決権60%(50%超)であれば、間接保有している甲(B株式会社の株主)が実質的支配者となる。B株式会社は甲の支配法人

 

例2

発起人B株式会社の株主

自然人 甲 議決権40%

自然人 乙 議決権30%

自然人 丙 議決権30%

この場合は、間接保有(50%超)がないので、③④を検討することになる。

③の該当者がなければ、④の設立のA株式会社の代表取締役が実質的支配者となる(甲乙丙ではない)。B株式会社は甲乙丙それぞれの支配法人ではない。

 

例3

発起人B株式会社の株主

甲株式会社(上場企業ではない)議決権100%(B株式会社は甲株式会社の子会社)

この場合、さらに甲株式会社の株主を調べる必要があるか?とも思ったが、公証人から「そこまでは不要」という指示を受け、③④を検討して、結局、④の設立のA株式会社の代表取締役が実質的支配者と判断された。

発起人が株式会社、その発起人の株式会社の株主(50%を超える)も株式会社と・・・どこまで株主を調べるのかという問題。しかし、これについては、後で、本当にこれでよかったのか?(本当は甲株式会社の株主も調べる必要があったのではないか)、疑問なしとしない感じは残ったが・・・(定款認証においては確認するのはここまででかまわないということか)

犯罪による収益の移転防止に関する法律からは、もし仮に、甲株式会社の株主に50%を超える自然人がいたら、その人が実質的支配者になるように思われる)。

 

具体例

設立会社 A株式会社

発起人 B株式会社(上場企業ではない)が25%出資(25%議決権・株式)

発起人 自然人 甲が26%出資(26%議決権・株式)

その他(省略)

の場合

B株式会社の株主が、自然人 甲 議決権60%(50%超)であれば、B株式会社は甲の支配法人で間接保有だから、甲は、B株式会社を通じて25%、自ら26%で合計51%(50%超)になるので、①で甲が実質的支配者となる。

もし、B株式会社の株主が、自然人 甲 議決権40%(50%以下)の場合は、B株式会社は甲の支配法人ではないから(間接保有ではない)、甲については26%出資(26%議決権)のみが①②の場合の基準となる。①に当てはまる者はおらず、②に当てはまる場合は、甲は(他に25%を超える者がいる場合は、その者とともに)実質的支配者となる。

 

ややこしい・・・

 

一般社団法人の場合

① 出資、融資、取引その他の関係を通じて事業活動に支配的な影響力を有すると認められる自然人全員

② 上記①がいない場合、設立する法人の代表者(代表理事

 

社員が2名いて、定款で一人1個の議決権(一人が反対すれば決議不能)になっていたので、社員2名は①にあたるか?と思ったが、結局、(その他①はいないとして)②の代表理事が実質的支配者と判断された。

議決権基準でないからということだが、ケースによっては社員が①「その他の関係を通じて」に当てはまる場合もあるのではないかとも思った・・・

 

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