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商業登記の際に添付する「本人確認証明書」

 

商業登記の際に添付する「本人確認証明書」について

(住所に注意)

 

商業登記規則第61条第7項

設立の登記又は取締役、監査役若しくは執行役の就任(再任を除く。)による変更の登記の申請書には、設立時取締役、設立時監査役、設立時執行役、取締役、監査役又は執行役(以下この項において「取締役等」という。)が就任を承諾したことを証する書面に記載した氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該取締役等が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。)ーこれがいわゆる本人確認証明書になりますーを添付しなければならない。

ただし、登記の申請書に第四項(第五項において読み替えて適用される場合を含む。)又は前項の規定により当該取締役等の印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付する場合は、この限りでない(但し書き)ー印鑑証明書を添付している場合は、印鑑証明書がある(実印も押している)のだから別途本人確認証明書は不要という、当たり前?のことを規定しています。

以下、これを本ブログで「但し書き」という。

 

上記規定により

設立の登記、取締役、監査役、執行役の就任の登記申請につき、
印鑑証明書を添付する場合(但し書きの場合)を除き、
取締役等の「本人確認証明書」の添付が必要となっています(再任は除く)。

 法務省:役員の登記の添付書面・役員欄の氏の記録が変わりました(平成27年2月27日から)

 

本人確認証明書の具体例

1、住民票

2、戸籍の附票(生年月日の記載はないが住所・氏名が記載されているのでOK)

3、印鑑証明書(法務省のHP等、記載がないことがあるが、当然、含まれる)

4、運転免許証(その他、在留カード特別永住者証明書、運転経歴証明書住民基本台帳カード)のコピー

表裏両面をコピーして、就任する取締役等本人が「原本と相違ない」と記載して記名押印する。住所変更があった場合、裏面にその記載がなされるので、それがあるかないかの確認のため裏面もコピーする(2枚にわたる場合、ページ間の割印(契印)もする)。住民基本台帳カード住基カード)は現在、発行はされておらず、有効期限が切れているものが多いと思われる。

5、個人番号カード(マイナンバーカード)のコピー

表面のみをコピーして、就任する取締役等本人が「原本と相違ない」と記載して記名押印する。裏面には個人番号の記載があるので、裏面はコピーしない。運転免許証と異なり、住所変更があった場合は表面に記載されるので、表面だけでかまわない。

旅券(パスポート)は住所の記載がないので、(不動産登記の本人確認情報作成の際の提示を受ける資料にはなるが)この商業登記の本人確認証明書にはならない。

なお、1・2・3の場合でも(これは原本を提出することが多いと思いますが)、4・5と同様、就任する取締役等本人が「原本と相違ない」と記載して記名押印する原本証明で提出することも可能です(条文に(当該取締役等が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。)とありますので・・・)。

*(追)令和3年2月15日から押印・契印は不要になりました。

インパクト(押印不要) - 司法書士とくの日記(ブログ)

 

就任承諾書には「住所」の記載が必要。

条文(商業登記規則第61条第7項)が「・・・就任を承諾したことを証する書面に記載した氏名及び「住所」と同一の氏名及び住所が記載されている・・・証明書」となっているため。

 

(注意1)

就任承諾書に実印を押印し印鑑証明書を添付するような但し書きの場合も、就任承諾書に「住所」の記載が必要としている法務局(東京法務局など)がある。実印を押印しているのだから同一性の証明はできており、前の登記実務どおり(就任承諾書に)「住所」はなくてもOKでよいように思うが・・・。

 

外国人の場合はどうなるか?

日本在住の外国人の場合は、住所登録をして日本人と同様、住民票や印鑑証明書が取得できる。

 

外国在住の外国人の場合

就任承諾書にサイン証明(署名証明書)を添付する場合(但し書きの場合)

(商業登記規則第61条関係)

「・・・取締役又は取締役会設置会社における代表取締役若しくは代表執行役(以下「代表取締役等」という。)・・・

外国人が設立時取締役等又は代表取締役等に就任した場合において、当該設立時取締役等又は代表取締役等が就任承諾したことを証する書面に署名しているときは、当該就任を承諾したことを証する書面の署名が本人のものであることの本国官憲の作成した証明書の添付をもって、市町村長の作成した印鑑証明書の添付に代えることができる。」(平成28年6月28日法務省民商第100号民事局長通達)

 

これは

「・・・書面の「署名」が本人のものであることの・・・証明書」となっているので、サインした書類に合綴されたサイン証明(合綴式)のことを言っていると思われる。

サイン証明には次の2種類がある。

合綴式(奥書式)-就任承諾書などのサインが必要な書類に、「このサインは本人がした」旨の証明書を綴り合せて(割印・契印をして)証明されるもの

単独式-日本の通常の印鑑証明書のように、サインする書類とは別に、サイン自体の証明をするもの(登記官が印影の照合をするのと同様に、サインの照合をする必要がある)

相続人はアメリカ人 - 司法書士とくの日記(ブログ)

 

(注意2)

合綴されたサイン証明の場合、その証明書自体に「住所」の記載がないことが多い・・・

但し書きの場合でも、証明書の方に住所がない場合どうなるか。

「市町村長の作成した印鑑証明書の添付に代えることができる」とあるのだから、住所の記載がないサイン証明書でも、但し書きの適用で、「本人確認証明書」不要と考えられるが、証明書自体に住所の記載がない場合、法務局で、別途、住所が記載された「本人確認証明書」の添付を要求されたことがある。

本人確認証明書は住所の記載されたものが必要なのだから、但し書きの場合でも証明書には「住所」の記載が必要と、バランスからの解釈か?

証明書には「住所」を(できる限り)入れてもらうのが無難、もしくは別途「本人確認証明書」を用意。

 

台湾、韓国、中国など日本の印鑑証明書にあたるものの発行が可能な国の場合は、(書類と合綴しなくてもよいので)それでするのが段取りし易い(ただし、台湾の印鑑証明書取得は手続きが少し煩雑)。

中国では公証処で、サイン証明だけでなく印影を証明するもの(公証書)の発行が可能のよう。

こちらも証明書に「住所」は入れてもらうのが望ましい(そうしないと、別途「本人確認証明書」を求められる場合がある)。

その他(但し書きでない場合)

外国官憲の作成に係る取締役等の氏名及び住所が記載された証明書(宣誓供述書など)

外国官憲発行に係る身分証明書等(各国のDriving Licence、中国や台湾の身分証など)

 

なお、外国在住の日本人の場合

日本大使館などで取得するサイン証明書(但し書きの場合含む)や在留証明書

運転免許証(Driving Licence)、在外選挙人証など

(サイン証明書に住所の記載がない場合、上記のとおり、別途「本人確認証明書」(在留証明書など)の添付を求められる場合がある)

なお、大使館によっては、日本におけるのと同様、印鑑登録して印鑑証明書の発行が可能なところもあります(タイの日本大使館は印鑑証明書の発行が可能でした)。

法務省:外国人・海外居住者の方の商業・法人登記の手続について

 

証明書類が外国語の場合は、日本語への翻訳文が必要

 

「住所」で混乱・・・

 

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