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特定非営利活動法人(NPO法人)の理事長の変更

特定非営利活動法人NPO法人)の理事長の変更

 

特定非営利活動法人NPO法人)は、理事が複数いても、その中から理事長(代表者)を選任(選定)している場合は、登記するのは、その理事長(代表者)のみになります。

理事長を「理事」として登記します。

代表権のない理事は登記されません。

その他、監事も登記事項ではなく、登記されません。

 

多くの法人が、

理事長(代表者)の選任は、理事の互選となっています。

 

理事の互選で(再任ではなく)新しい理事長を選任(選定)した場合

 

前の理事長 A(理事としては再任されている)

新しく選任された理事長 B

その他、代表権のない理事 C

 

理事会議事録(理事の互選書にあたります)

特定非営利活動法人NPO法人)には、法定では理事会というのはないのですが、定款で理事の会議を理事会と定めている場合が多いです。

「議長は、理事全員が任期満了退任し、令和1年〇月〇日に開催された通常総会で新たに理事が選任されたので、定款の定めにより、その理事の中から理事長1名の選定を行いたい旨を諮ったところ、全員の一致により次の者を理事長に選定した。被選任者は席上、即時その就任を承諾した。理事長B」

理事会議事録の押印

議長 理事 A 印

理事 B 印

理事 C 印

の場合

 

ここに押印する印鑑はどのような印鑑を押すのか?

代表者の選任なので、法律(商業登記規則)は厳格な規定をしています。

原則、理事会議事録に押印する理事の印鑑は個人の実印で、印鑑証明書の添付が必要。

理事の数が多い特定非営利活動法人NPO法人)は結構大変です。

ただし、これには例外があり、前の理事長Aのところに押印する印鑑を、Aが法務局へ届出している法人実印にすれば、ABCの個人の実印押印、印鑑証明書添付しなくてもよくなります(商業登記法規則第61条第6項ただし書き)。

Aは、代表権はなくなっていますが、代表権のない理事として法人実印を押印することになります。法務局への届出印が押されることにより、ある程度、真正担保ができるということです。あくまで、前の理事長であるA自身が、自分が法務局へ届出している法人実印を押す場合です。

AのところにAが法務局へ届出している法人実印の押印がなく、

Bのところに、今回、Bが新たに印鑑届出をする法人実印を押している場合は、(その印鑑がAのものと同じであっても、Bは変更前の代表者ではないので)原則どおり、ABCの個人の実印押印、印鑑証明書添付が必要になります(商業登記法規則第61条第6項)。

また、Aが理事として再任されていないなど、Aが議事録に押印できない(しない)場合も、原則どおり、理事が理事会議事録に押印する印鑑については、個人の実印押印、印鑑証明書添付が必要になります(商業登記法規則第61条第6項)。

(ちなみに、Aが理事長として再任されているケースでは、AのところにAが法務局へ届出している法人実印を押せば、他の理事の押印は認印でもOK)

 

なお、特定非営利活動法人NPO法人)は、株式会社や一般社団法人のように実在人保証としての就任承諾書に実印を押印し印鑑証明書を添付する商業登記法規則第61条第4項などは適用(準用)されていません(ただし、印鑑届出には印鑑証明書の添付は必要)。本人確認証明書も不要。

商業登記の際に添付する「本人確認証明書」 - 司法書士とくの日記(ブログ)

 

添付書類

・社員総会議事録(任期満了等、理事の選任)

・理事会議事録(理事長の選任。理事の互選書にあたるもの)

・定款(任期や互選規定の確認のため)

・就任承諾書(議事録の記載を援用できる場合あり)

・印鑑証明書(選任真正担保のためのもの。上記のとおり、不要にできる場合あり)

・印鑑届出書(新しい理事長の個人の印鑑証明書添付)

 

なお、法務省のHPの登記申請例を見ると、理事会議事録(理事の互選の実質を備えたもの)については、定款で理事会議事録につき議事録署名人の規定があり、議長と議事録署名人が押印している場合は、出席した理事全員ではなく、その議事録に押印をした議長、議事録署名人につき実印押印、印鑑証明書添付でもOKのようだ。(前の)理事長が届出印を押印している場合の印鑑証明書添付不要なのは同様。

 

商業登記法規則第61条第6項

代表取締役又は代表執行役の就任による変更の登記の申請書には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める印鑑につき市区町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、当該印鑑と変更前の代表取締役又は代表執行役(取締役を兼ねる者に限る。)が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない

一 株主総会又は種類株主総会の決議によつて代表取締役を定めた場合 議長及び出席した取締役が株主総会又は種類株主総会の議事録に押印した印鑑

二 取締役の互選によつて代表取締役を定めた場合 取締役がその互選を証する書面に押印した印鑑

三 取締役会の決議によつて代表取締役又は代表執行役を選定した場合 出席した取締役及び監査役が取締役会の議事録に押印した印鑑

 

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商業登記に関する過去ブログ - 司法書士とくの日記(ブログ)