司法書士とくの日記(ブログ)

司法書士業務、マラソン、その他

後見制度は利用できず

一人暮らしで身寄りのない高齢者

骨折がきっかけで、ほぼ寝たきりに・・・

ご本人でのお金の出し入れなどが困難となりました。

(これまでしっかりされていましたが)

寝たきりになって精神に混乱が生じたためか、

不安症状が出たり、物忘れが生じるようになりました。

(施設入所も検討しなければならなくなり)

ケアマネさんと相談され、後見制度の利用を検討

判断能力の低下がみられるということで、

ケアマネさんが「本人情報シート」を作成

かかりつけのお医者さんに後見の診断書作成を依頼しました。

本人情報シートには通帳をどこに置いたか忘れることがあるなど、能力の低下の記載があり、補助か保佐相当の診断は出るかな、と思われていましたが・・・

診断結果は

「契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することができる」にチェックが入っていました。(ご本人が相当がんばられたようで)長谷川式認知症スケールで30点満点中、27点になっていました。

ご本人が希望されて本人申立で後見制度の利用を考えておられましたが、

このような場合(ご本人に判断能力があり頭はしっかりしているが、身体が悪く不安だから・・・)は、後見制度を利用することはできません。

将来、判断能力が衰えたときに備えての任意後見というものがありますが、

これは、あくまで将来に備えてのもので、すぐに利用したい場合は当てはまりません。

任意後見は、信頼できる将来任せたいと思う方と、公正証書で任意後見契約をし(登記もされます)、その後(将来)、本人の判断能力が低下した際に、家庭裁判所へ任意後見監督人選任申立をして、任意後見監督人が選任されて初めて効力が発生するものになります。

 

ご本人に判断能力があり、頭がしっかりされているような場合は、任意代理契約(財産管理等委任契約のこと。生活、療養看護及び財産管理に関する事務等を特定の人に委任する契約)の利用が可能です。

ただし、任意代理契約は後見制度と異なり、家庭裁判所などの監督機関がないため、本人でのチェックがあまりできないような状況で利用する場合は、注意が必要となります(財産管理の事務でお金を勝手に使われたりしないように)。代理人は信頼できる人であることはもちろん、定期的な本人のチェックはできるようにしておいた方がよい。

また、施設入所や自宅売却などの大きなことは、(代理人ではなく)やはり本人がしていくことになります(意思決定)。

このように、任意代理契約は監督機関がないため、(司法書士などが加入している)公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート(LS)では、任意代理契約を締結する場合、とても厳しくて、LSによる契約内容の事前確認と本人との面談(LS立会)が必要、もしくは、LSを監督人としてLSも契約当事者として3面契約でしなければなりません。また、必ず任意後見契約が前提で、基本、公正証書でしなければならず、代理権の範囲は、原則、日常業務及び身上監護に関する業務に限定、報酬は日当分を含めた定額報酬のみ、になっています。契約後は、(本人にはもちろん)定期的にLSにも報告が必要になっています。

このようなので任意代理契約については、(依頼があっても)その必要性や、他に代替措置がないかどうかを吟味・検討して、できるだけしない方向で考えるようにしています。

成年後見(本人のためにある)2 - 司法書士とくの日記(ブログ)