脱ハンコ
法務省は、婚姻届や離婚届については、認印で可能なため、押印の廃止を検討。一方、実印が必要な登記手続については、現時点で廃止は困難、と内閣府に回答しているという(それはそうだろう・・・)
さて、当HPの過去記事を投稿
印鑑について(ハンコ社会「日本」)
日本では、役所への印鑑登録制度があり、印鑑がさまざまな契約の際、重要な役割をはたします。
不動産の売買、賃貸借、お金の貸し借り、住宅ローンの設定等、重要な契約をする場合、必ず契約書を作成し、そこに署名・押印が求められ、多くの場合、登録された実印での押印が求められます。署名は、記名押印(例えば名前はワープロで印字されており、そこに押印するだけ)でも通用しますので、その場合、押印がポイントになります。
実は、裁判実務では、署名とともに「押印」が重要な判断材料とされています。
その契約書に印が押してある場合、その押印されている印鑑が、本人のものであれば、「本人が自分の意思で押印した」と推定されます。そして、さらに、本人が自分の意思で押印したのであれば、その契約書の作成(契約書に書いてあること)は、本人の意思に基づくものであると推定されてしまうのです。
したがって、他人が押印した場合でも、その印鑑が本人のものであれば、なんと「その契約書の内容は、本人の意思に基づくものである」というところまで推定されてしまうということになります。その印鑑が実印であれば、印鑑証明書により簡単に本人の印鑑であるということは立証できます。あくまで推定ですので、反対の証拠等を出せば、くつがえることはありますが、前記の「おれの印鑑が押されているけど、そんな契約した覚えはないよ」という主張はそう簡単には認められない(かも)ということです。
二段の推定
成立の真正に争いのある文書について、印影と作成名義人の印章が一致することが立証されれば、その印影は作成名義人の意思に基づき押印されたことが推定され、更に、民事訴訟法228条4項によりその印影に係る私文書は作成名義人の意思に基づき作成されたことが推定されるとする判例(最判昭 39・5・12民集 18 巻4号597 頁)があります(「二段の推定」)。
民事訴訟法228条4項
私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。