今日は雨
前ブログ(ごちゃごちゃと思考の向くまま書いたので長文になってしまいました)
成年後見(本人のためにある) - 司法書士とくの日記(ブログ)
その最後の方に、
・・・・・
成年後見人は、・・・本人の財産をできるだけ維持し減らさないというのが役割ではなく・・・、十分な財産がある場合は、本人ために必要があれば積極的に「使う」、というのも役割になります。・・・できるだけ財産を残しておく、というのは、相続人のためにはなりますが、成年後見人がそれを考えてはダメで、(ご本人の希望も含め)ご本人に必要なものは、(ご本人の財産から)捻出可能であれば、積極的に捻出するということが必要になります。
(この点だけを考えた場合ですが)推定相続人や(予定)受遺者が成年後見人になるのは弊害があるのかなと思ったりします・・・(微妙な問題ですが)
と記載しました。
このように考えるようになったきっかけは、次のような事例に接したからです。
(盛ってるわけではありませんが、すこし事案は変えています)
後見制度支援信託の利用が必要となった事案で、親(本人、被後見人)の親族後見人として、本人の子(四男・末っ子の方)が就いている後見事件に関与しました。
親族後見人といっしょに、
私も(後見制度支援信託のため)専門職後見人として就任している間ですが、
ご本人が自宅を出て、施設に入らなければならない状況になりました。
どの施設が良いのか?
その施設の選択肢ですが、介護老人福祉施設のいわゆる「特別養護老人ホーム(特養)」のみで、なぜか他の施設を考えるということはまったくありませんでした。
(介護認定の区分変更の申請をし、要介護3になりましたが)
特別養護老人ホームは社会福祉法人などが運営しており低費用で入所でき、人気がありますので、空きがありません。
ですから、ショートステイを何度か繰り返し、老人保健施設(老健)に短期入所し、特別養護老人ホームの空きをひたすら「待つ」という状態になっていました。
後見制度支援信託を裁判所から指導されるぐらいなので、多額の預貯金があり、費用の面で、特別養護老人ホームしか選択肢がないという方ではありません。
私は当初、内心「高級と言われる有料老人ホームを含め、グループホームなど、民間の施設であれば、どこでも入れるのに・・・」と思っていました。
もちろん、費用が高い施設が必ずしも良い施設とは限りませんが(その辺の見極めは必要ですが)一般的には、費用が高い施設は、人員に余裕があったり、サービスが良かったりする場合が多いと思います。もちろん特別養護老人ホームが悪いわけではありませんが、空きがないのに、かたくなに特別養護老人ホームにこだわられるのには違和感がありました。
私は、後見制度支援信託のための後見人なので、親族後見人がする療養介護等の事務にはあまり介入しないようにしていましたが、(環境が頻繁に変わるためか)ご本人が不穏になることが多く、親族後見人の方がショートステイ先や老健から呼び出しがかかり苦労されているので、その辺を雑談の中で話したところ・・・
「費用の高い施設に入れると、他の兄弟など周りから何を言われるかわからないので」と言われました・・・
(財産のある方なので、特別養護老人ホームでも、それなりの費用はかかりますが、他の施設と比べればやはり安くで済みます)
えっ!?そんなことあるのかな?
それではということで、他の兄弟を含めてのケア会議の提案もしましたが、結局、それはなく、長期間(かなりの長期間でしたが)、待って、なんとか特別養護老人ホームに入所でき、生活が落ち着いたので、私は、後見制度支援信託をして、辞任しました。
これは、(おそらく)費用の高い施設に入所すると財産が減るというのを気にされていたのだと思います(末っ子だから他の兄弟の目を気にされていたのか)。しかし、確かに収入は年金のみで多くありませんでしたが、預貯金は、私から見たら「大金持ち、資産家」と思えるぐらいありましたので、いろいろな施設を選択肢に入れることができる方でした。特別養護老人ホームに入るまで、長期間、ショートステイ先や老健を転々とされ、ご本人は安定しないことが原因か?不穏になることが多く(認知症状も進んだかも?)、親族後見人の方もとても苦労されてました。
これは、将来の相続のこと(本人の財産を減らしたくない)があって、本人の財産が有効に活用されていない事例なのではないか?という印象を受けました。
また、別の事例ですが、私が成年後見人に就いていて、部屋にエアコンが必要となり、それを購入しました。
財産に余裕のある方でしたので、(ご自身で操作はむずかしい方なので)温度調節が全自動の、フィルター清掃付のエアコンを購入しました。すると、それを見た(ご本人の)兄弟から、「なんでこんな高いエアコンを買ったのか」と苦情がきました。財産状況や、必要性など説明しましたが、「そんなに長く生きないのに。10万円未満で売ってる」など、言われ、そのときは、本人の財産から出しているのに?数万円の差で、なぜそんなに神経質に苦情が来るのか理解できませんでした。
今では、(まあ稀に)そんなこともあるか、と理解できるようにはなりましたが・・・
また、別事案。世話をしていた親族が高齢でできなくなり、私が成年後見人に就任した事案。ご本人は、精神科病院に入院されていましたが、(なぜか)費用がかかるからと歯科検診(治療)はしないことになっていました。歯科検診(治療)するぐらいの収入は十分あるので、依頼しました(定期的な歯科検診は重要)。
など、など
本人の財産が有効に使われないことがある(極端な言葉で言うと、消極的な経済的虐待)?
ご親族の場合、基本に「愛情」があるので、このようなことは、稀だと思いたいが、(私の少ない経験ですが)後見制度を利用していたから明るみに出ただけで、実際は結構あるのか?、よくわかりません。
(ただ、親族後見人の中には、後見になった場合、裁判所から出費を厳しくチェックされるということで、勘違いをして、本人のための出費も抑える方がいますが、本人のための出費、本人の意思を尊重した出費を裁判所が制限するなんてことはありません)
このような経験を経ると、
身寄りのない方などが、しっかりしているうちに(将来のことを考え)、任意後見契約、遺言、死後事務委任契約を三点セット(もしくは見守りや任意代理の財産管理委任契約もプラス)ですることがありますが、その任意後見人(受任者)と受遺者(遺言で財産を受け取る人)が同一人物になっているのをみると、「危ないな」と感じようになりました。任意後見契約の中身は細かく決めることも可能ですが、将来のことなので、ある程度包括的になることもやむを得ません。もし、万が一、(効力発生後)任意後見人が「自分は受遺者なので、本人の財産はできるだけ使わないようにしよう」・・・なんて考えたら。まあ、任意後見人の場合は、自分が信頼した人なので、ある程度、仕方がない面はありますが・・・(もし、この任意後見人(受任者)が専門職の場合は、「私を受遺者にするのはやめてください。受遺者にしても、遺贈は放棄することになりますから」とアドバイスすることになります)
本人の財産がきちんと本人ために「有効に使われているのかどうか」のところのチェック機能は、あるのか?
追(余談)
成年後見人の仕事をするようになった当初は、まず生活保護の申請から始まるとか、生活保護に近い方など、財産が少ない方ばかりで、なんとか生活が破綻しないように節約していくということが多かったが、その後、財産が多い方の成年後見人にも就任するようになり、財産が多いと、本人の希望を叶えたり、本人のためにできる選択肢が多くなり、やはり「お金は大事」と思うようになりました。ただ、本人のためにどのように使うか、というのはケースによって、むずかしいこともあります(本人のために積極的に手配等をする場面と、基本、本人の財産を管理しているだけなので必要性がなければ何もしない、してはいけないという場面のバランス。判断は独りよがりにならないよう関係者、協力者と相談等しながらするのが大事か)。