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後見等開始の効力発生時期について

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必要に迫られてから相談となるので、(超)急ぎの後見等開始申立の依頼が多くなっています。申立人になってもらえるような身内(親族)がいない本人申立の保佐、補助(開始と代理権付与)のケースが多いです。

 

さて、大分前のことですが・・・

本人申立で補助開始の申立てがなされ、

当方が補助人に選任された事案がありました。

当方に審判書が特別送達で届いてから、2週間を超え(3週間程度)が経過しましたので、もう「確定しているだろう」と思い、家庭裁判所に問い合わせたところ、

被補助人のご本人(ご自宅で一人暮らし)が審判書の郵送物(特別送達)を(留守で)受け取らず、裁判所に戻ってきており、再度、発送する段取りをしていることを告げられたことがあります。

補助開始の場合は、

補助人だけではなく、被補助人(本人、このケースでは申立人も兼ねている)にも審判書が特別送達で郵送され、基本、ご本人(被補助人)の受取が必要となります。

ご本人(被補助人)が受け取らない限りは、いつまでたっても審判が確定しない(効力が生じない)という状態になってしまいます。

このケースでは、ご本人は昼間、就労支援B型の作業所で働いていましたので、この作業所に送達してもらい2週間経過で確定(効力発生)しました。

ご本人が(自宅で)寝たきりで対応できない場合(不在票投函となる場合)は、ケアマネさんなどが再配達の手続きをして、その時間帯、(ご本人受取のため)ご本人の自宅にヘルパーさんかケアマネさんなどが待機する必要があったりします。

(なお、特別送達というのは裁判所が差出人となる特別な郵便で、受け取り拒否ができない、配達状況が記録され、その記録が裁判所に通知される、などの特殊な書留郵便になります)

 

この辺、家事事件手続法などの法律に規定があります。

保佐や補助ではなく(成年)後見開始の場合・・・

「後見開始の審判は成年後見人に審判書が届いてから2週間経過で確定」と言われます。

(成年)後見開始の場合の場合、審判が「告知」(審判書が送達)されるのは、「成年後見人」と「申立人」になります(本人の被後見人は対象とされていません)。

家事事件手続法の第七十四条第一項に「審判は、特別の定めがある場合を除き、「当事者」及び利害関係参加人並びにこれらの者以外の審判を受ける者に対し、相当と認める方法で「告知」しなければならない。」とあります。

当事者というのは、申立人と、被後見人(本人)も含まれると思いますが、

しかし、別途、家事事件手続法の第122条に「次の各号に掲げる審判は、当該各号に定める者に「通知」しなければならない。この場合においては、成年被後見人となるべき者及び成年被後見人については、第七十四条第一項の規定は、適用しない。一 後見開始の審判 成年被後見人となるべき者」とあって、被後見人(本人)には告知ではなく「通知」がなされます。

さらに「次の各号に掲げる審判は、第七十四条第一項に規定する者のほか、当該各号に定める者に告知しなければならない。一 後見開始の審判 民法第八百四十三条第一項の規定により成年後見人に選任される者・・・」

とあり、成年後見人には告知されることになります。

 

成年被後見人(本人)へは(告知ではなく)「通知」

成年後見人(に選任される者)へは「告知」

 

「告知」は通常、特別送達(特殊な書留郵便)でなされ、「通知」の方は普通郵便でなされたりします(この辺の区別はよくわかりませんが、告知の場合は、効力発生や即時抗告の関係があり厳重に特別送達でなされるのだと思います)。ですから、被後見人へは、(告知ではなく)通知で普通郵便でなされるため、特別送達(書留)のような受取は不要になり(受取能力の点でこのようになっているのだと思います)、また仮に被後見人が通知を受け取っていなくても、(成年後見人になる者が特別送達の審判書を受け取っていれば)即時抗告期間は進み確定が可能となっています。

 

家事事件手続法・・・

第七十四条

審判は、特別の定めがある場合を除き、当事者及び利害関係参加人並びにこれらの者以外の審判を受ける者に対し、相当と認める方法で告知しなければならない。(→この規定は、成年被後見人となる者には適用なし)

2 審判(申立てを却下する審判を除く。)は、特別の定めがある場合を除き、審判を受ける者(審判を受ける者が数人あるときは、そのうちの一人)に告知することによってその効力を生ずる。ただし、即時抗告をすることができる審判は、確定しなければその効力を生じない。

(即時抗告)

第百二十三条 次の各号に掲げる審判に対しては、当該各号に定める者(第一号にあっては、申立人を除く。)は、即時抗告をすることができる。

一 後見開始の審判 民法第七条(→被後見人である本人を含め後見開始申立ができる者)・・・に規定する者

二 後見開始の申立てを却下する審判 申立人

(省略)

2 審判の告知を受ける者でない者(→被後見人である本人を含め後見開始申立ができる即時抗告できる人のこと)による後見開始の審判に対する即時抗告の期間は、民法第八百四十三条第一項の規定により成年後見人に選任される者が審判の告知を受けた日(二以上あるときは、当該日のうち「最も遅い日」)から進行する。

(即時抗告期間)

第八十六条 審判に対する即時抗告は、特別の定めがある場合を除き、二週間の不変期間内にしなければならない。ただし、その期間前に提起した即時抗告の効力を妨げない。

2 即時抗告の期間は、特別の定めがある場合を除き、即時抗告をする者が、審判の「告知」を受ける者である場合にあってはその者が審判の「告知」を受けた日から、審判の「告知」を受ける者でない場合にあっては申立人(→ここは第123条2項により「成年後見人に選任される者」になります)が審判の告知を受けた日(二以上あるときは、当該日のうち最も遅い日)から、それぞれ進行する。・・・以上

 

後見開始の審判に対して即時抗告できるのは、本人を含め後見開始申立ができる者になりますが、その被後見人本人は(通知で)告知は受けませんので、成年後見人に選任される者に審判書が届いてから2週間経過で確定」家事事件手続法第123条2項)となります。

なお、申立人の即時抗告は(却下に対してはできますが)後見開始の審判(認める審判)に対してはできません。

 

上記の後見の場合と異なり、

補助や保佐の場合は、

申立人、保佐人や補助人、それから(原則どおり)本人の被保佐人や被補助人へも告知する規定になっています。

 

保佐(審判の告知)

第百三十一条 次の各号に掲げる審判は、第七十四条第一項に規定する者のほか、当該各号に定める者に告知しなければならない。

一 保佐開始の審判 民法第八百七十六条の二第一項の規定により保佐人に選任される者・・・

補助(審判の告知)

第百四十条 次の各号に掲げる審判は、第七十四条第一項に規定する者のほか、当該各号に定める者に告知しなければならない。

一 補助開始の審判 民法第八百七十六条の七第一項の規定により補助人に選任される者

 

第七十四条第一項に規定する者というのは、当事者のことで、申立人や本人(被保佐人、被補助人)になります。本人(被保佐人、被補助人)へは審判を受ける当事者として告知されます。

そして、本人を含む保佐や補助開始申立ができる者(申立人は除く)は、開始の審判に対して即時抗告をすることができます。

 
即時抗告の期間については、以下のとおり、それぞれ特別規定があります。
保佐(即時抗告)第百三十二条

2 審判の告知を受ける者でない者及び被保佐人となるべき者による保佐開始の審判に対する即時抗告の期間は、被保佐人となるべき者が審判の告知を受けた日及び民法第八百七十六条の二第一項の規定により保佐人に選任される者が審判の告知を受けた日のうち「最も遅い日」から進行する。

補助(即時抗告)第百四十一条

2 審判の告知を受ける者でない者及び被補助人となるべき者による補助開始の審判に対する即時抗告の期間は、被補助人となるべき者が審判の告知を受けた日及び民法第八百七十六条の七第一項の規定により補助人に選任される者が審判の告知を受けた日のうち「最も遅い日」から進行する。

 

保佐、補助の場合、(保佐人や補助人への告知から2週間経過していても)本人(被保佐人、被補助人)が審判の「告知」を受けた日から2週間経過しないと確定しないことになります。本人(被保佐人、被補助人)が特別送達で送られてきた審判書を留守などで受け取れない場合は、いつまでたっても2週間の即時抗告期間が起算されないので、審判が確定しません。

 

保佐や補助の場合、被保佐人や被補助人となるご本人が自宅で一人暮らし、昼間外出している、寝たきりで書留郵便が受け取れない、再配達の申出ができない、など、ご本人が特別送達で送られてくる審判書を受け取ることがむずかしいケースについては、保佐人や補助人として活動できる確定時期(効力発生時期)が遅れてしまうことがあるので注意が必要です。

 

(まとめ)

・後見開始の審判は、「成年後見人(に選任される者)」に審判書が届いてから2週間経過で確定(家事事件手続法第123条2項)

・保佐開始の審判は、「保佐人(に選任される者)」及び「被保佐人となる者(本人)」の両者に審判書が届いてから2週間経過で確定(家事事件手続法第132条2項)

・補助開始の審判は、「補助人(に選任される者)」及び「被補助人となる者(本人)」の両者に審判書が届いてから2週間経過で確定(家事事件手続法第141条2項)

成年後見人、保佐人、補助人(に選任される者)が複数ある場合は、その内もっとも遅い日になります。

 

最初の事案で、本人(被保佐人、被補助人)が申立人を兼ねているような場合は、申立人の立場としては、認める審判に対しては即時抗告できないので、その時ふと、申立人兼本人(被保佐人、被補助人)が審判の告知を受けた日から「2週間の経過は不要なのではないか?」と思いましたが、即時抗告は他に四親等内の親族などもでき、法律の規定もあるので、被補助人に送達されてから2週間の経過は必要でした(家事事件手続法第141条2項)。

施設入所希望で入所の必要性がとても高い人、この2週間も待てない、さらには申立すらも待てないほどの方がいます。候補者という(権限はなにもない)立場ですが、事前にできる範囲で動かざるを得ません。

本人申立で関与の親族がいない場合、即時抗告する人というのは考えられないので、審判が出た時点で事実上、確定といってもよいと思ったりします・・・

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