司法書士とくの日記(ブログ)

司法書士業務、マラソン、その他

森の中の事務所


司法書士事務所は、前が中学校になっていて
木が生い茂っています。
窓を見ると、森の中に事務所があるようです。


さて
成年後見制度には
後見、保佐、補助がありますが、
施設などの関係者は保佐や補助の場合でも
「後見人」という言葉を使う場合が多いです。
病院には「保佐人」ですと言っても
施設などからは「後見人」と伝えられるので、
病院の方からは後見人と保佐人という人がそれぞれいる
と思われたりします。
後見人というとなんとなくわかってもらえますが
保佐とか補助と言うと「?」となったりすることがあります。


ところで(話は変わりますが)、
公益社団法人
成年後見センター・リーガルサポート
(以下、「リーガルサポート」という)
という構成員が主に司法書士である団体があり、
私も加入しています。
家庭裁判所に名簿を提出しており、
家庭裁判所からの後見人等の就任依頼などに応じています。
(どのように候補者を選ぶかは支部や地区によって
異なっています)


会員は就任している後見等につき
半年に1回、このリーガルサポートへ
被後見人等の財産や収支などの報告が義務づけられています
(通帳の最後の残高が判る箇所をPDFファイルにして、
被後見人等の個人が特定できるような情報は黒塗り(マスキング)
して添付もします)。
この報告は、自分の業務の再確認にもなりますので、
良いと思っています。


しかし、この報告とは別に
今年度から、このリーガルサポートにおいて
司法書士(会員)の専門職が管理している
被後見人等の通帳の「原本」確認が本格的に始まるようです。
膨大な数の後見等案件のすべての通帳の「原本」を
報告の内容と合っているかどうか確認するということです。


親族後見人と比較し件数は少ないですが、
司法書士などの専門職でも被後見人等の財産を横領した
という事件(犯罪)があります。
司法書士が被後見人等の財産を横領した事件で、
報告する通帳が偽造されていたため、発覚が遅れた
ということがあったので、
そういうことを防ぐため(抑止も含め)、
リーガルサポートで通帳の「原本」を確認する
ということになりました。


後見という制度は
(任期制ではなく)
一人の後見人が、長期にわたり
広い範囲の権限をもって財産管理等していくというもので、
また、家庭裁判所の監督が不十分ということもあって、
このような横領が一定数生じてしまったということだと思います
(犯罪なのでまったくゼロにする方策はむずかしい)。


その制度上、運用上の不具合(欠陥)を埋めるがごとく、
リーガルサポートが、会員の管理している通帳すべてにつき
原本確認をするのだということになっています。


民間の1団体が膨大な時間と労力をかけ
(それをするのはおそらく支部や地区の役員担当者
になると思います)
ここまでのことをしなければならないのか?


制度の不具合(欠陥)であれば、
制度を変えていくのが筋だと思われ、
現在すでにある後見制度支援信託や後見等監督の積極的な利用や、
また、家庭裁判所の監督を実行あるものにするため、
報告回数を増やす、面談、通帳原本を家庭裁判所に持参し、
家庭裁判所がその場で確認するなどで対応すべきだと思います。


(個人情報の保護・開示の問題もありますが)
対費用効果との兼ね合いから考えても疑問です。
抑止や発見の効果はまったくないとはいいませんが、
そんなに大きな効果はないだろうと思います。
リーガルサポートで横領の原因の究明がなされていますが、
その原因の多くは事務所等の経済的困窮だとされています。
当たり前のことですが、お金に困って、つい目の前にあるお金に
手をつけてしまったということです。
横領という犯罪行為をする人間は、やるときにはやってしまうのだと
思います。いつになるかわからないが将来原本確認されるから
やめておこうなどという、それぐらいで止まることができる場合は、
もともとやらないのだと思います(お金に困っていても、
プライドや社会的使命感もあり、また、司法書士の職を失うという
リスクをかけてまでやろうとは思わない)。


例えば、自分の子供が難病になり、
アメリカでの手術を受ければ助かるかもしれないが、
それには1000万円のお金がかかる。
そのお金がどうしてもできない場合、
このような場合、私自身、正直なところ、
横領しない自信はまったくもってありません
(多額の預貯金がある場合は、
後見制度支援信託をしておいた方が良いと思います)。


原本確認するなどというのは本当に小さな抑止
司法書士が横領するような場面ではないに等しい)
しかないと思います。


公益法人を維持するためにするのだ、
とも言われていますが(この辺の事情はよくわかりませんが)、
ここまでしないと維持できないのであれば
一般社団法人になってもよいのではないかと思います。


ただ、
「リーガルサポートはこれだけのことをやってますよ」
という対外的なアピールの効果は大きいかなとは思います・・・
もし、それが理由であれば、それが適切かどうかは別にして
(声を大にしては言えないと思いますが)、一応納得はできます。


原本確認する労力が・・・。


リーガルサポートの会員は、
定額会費とは別に後見等の報酬を得た場合、
その5%をリーガルサポートの会費として納めることになっています。
私はリーガルサポートで財務委員をしていますが、
財務委員会で、この会費漏れがないかどうか
兵庫県の全会員につきチェックをするということになりました。
(内心いやだなーと思いつつも、他の委員と分担して)
担当分をチェックして、もれにつき通知をしました。
チェックするデータは膨大な数がありましたので、
この作業は大変で、徹夜してまでやり、
日頃の司法書士業務にかなりの支障が生じたと思います。
(このとき、財産が少なく報酬付与の申立自体していない
という案件が想像していたより多くあり、驚きました)


おそらく通帳の原本確認も
同じように(責任感のある?まじめな?)担当司法書士
大事な多くの時間をかけて(つぶして)なされるのだろうと思います
(申し訳ないので、される場合はできる限りの協力をしようと思っています)。


森に迷い込んでいるような・・・



現在の家庭裁判所への報告は、
原則、実際の月別収支表や年間収支表の添付は
求められておらず、また通帳に載っていないような
臨時の収入や支出はその資料(コピー)の添付が
求められますが、それは10万円を超える場合に
のみ添付となっており、なぜか簡略化の方向にあると思います。
(このようなのでリーガルサポートにそこのところを埋めてほしい
というのがあるのだろうか?)
しかし、私は、後見人も急に病気になったり死ぬことはあり、
家庭裁判所に詳しい資料があった方が引継がしやすいと思われ、
また、家庭裁判所にも情報を保管しておいてもらいたいという
思いもあって、
できるだけ詳しい内容と情報を報告添付するようにしています。
月別収支表、年間収支表、現金出納帳は必ず添付します。
家庭裁判所から不要と言われたことはありません)
以前は、日々の後見日誌もコピーして添付していました。
家庭裁判所からは詳しい報告添付を求められた方が良いと思っています
(横領等防ぐ効果はこうした方があるのではないかと思います)。
破産申立のように裁判所のチェックはいろいろな書類の添付が求められ
細かく厳しいというイメージがあった方が良いと思います。
もっとも、市へ報酬助成の申請をするケースでは、
市へは年間収支表は必ず提出しないといけませんし、
原則、すべての領収書の添付が求められます(審査も細かく厳しいです)。