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事業用定期借地権について(その2)

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事業用定期借地権について(その1) - 司法書士とくの日記(ブログ)

 

事業用定期借地権

「賃借権」は、地上権と異なり債権で、賃貸人(土地の所有者)に登記義務はなく、また、借地借家法第10条で、借地上の建物の登記をすれば、対抗力があるとされていますので、あまり登記はされません。

しかし、今回は、賃借人が社会福祉法人で、県からの指導により登記することになったようです。公正証書にも登記はできる旨記載があり、賃貸人は賃借人へ登記に必要な書類を交付する旨の記載があります。

 

法務局に照会したところ・・・

存続期間「〇〇施設を開設する日から30年間」と、このような確定期日でないものは登記できないということです。別途「登記原因証明情報」を作成して、始期を明確にする必要があります。

(補足 存続期間の開始前は、(公正証書で設定契約はなされていても)事業用定期借地権設定は仮登記しかできず、「本登記は存続期間開始日以降に申請する」ことになります。この点からも始期は明確にする必要があります)

また、存続期間が30年の場合は、借地借家法第23条第1項となり、公正証書に「借地借家法第23条第2項」とあるのは誤りで、公正証書の訂正が必要になります。

 

さらに、この公正証書では、数筆の不動産について、まとめて賃料が定められていました。登記する場合は、1筆ごとの賃料が必要になります。

敷金は数筆まとめた金額でも大丈夫ですが、賃料については、不動産ごとに定めて登記する必要があります(もしくは1平方メートルにつき1月〇〇円など)。 

これも、存続期間と同様、別途「登記原因証明情報」を作成して登記することになります。この別途作成する登記原因証明情報は公正証書でなくても大丈夫ということです。

 

23条1項の登記申請
目的 賃借権設定
原因 年月日設定
目的 借地借家法第23条第1項の建物所有
賃料 不動産の表示の箇所に記載のとおり
支払時期 翌月分を毎月末日までに支払う
存続期間 令和〇年〇月〇日から30年間
敷金 金〇〇〇万円
特約  借地借家法第23条第1項の特約
(契約の更新がない、建物の築造による存続期間の延長がない、13条の建物買取請求をしないの3点すべて特約している場合)
権利者
義務者
添付書類
登記原因証明情報(設定契約をした公正証書
+別途作成した「登記原因証明情報」(確定の存続期間、不動産ごとの賃料を明記)
登記識別情報
印鑑証明情報
代理権限証明情報
会社法人等番号
非課税証明書
令和〇年〇月〇日申請 法務局
登録免許税 登録免許税法第4条第2項により非課税
不動産の表示
(1)土地 賃料 1月 金〇〇円
(2)土地 賃料 1月 金〇〇円
(3)土地 賃料 1月 金〇〇円
複数の不動産に一括で設定する場合、「賃料」については、不動産ごとに賃料を定めて登記しなければならない。しかし、「敷金」については、一括の金額で登記可能ということだ。
抵当権の共同担保目録のようなものがないので、賃料は不動産ごとの金額を記載する。〇番〇の土地、〇番〇の土地とともに1月〇〇円というような記載はなぜか?認められていません。ただし、敷金の方は一括で金〇〇〇円と登記するのは認められているようです(今回は、これでいけました)。
存続期間の確定期日は、公正証書でなくても、別途「登記原因証明情報」で明示できれば大丈夫でした。
 
なお、存続期間が30年なのに公正証書借地借家法第23条第2項となっている点については、別途、誤記証明書(借地借家法第23条第1項に訂正)が発行されました。