司法書士とくの日記(ブログ)

司法書士業務、マラソン、その他

改正民法(債権法)4

f:id:tokucyan-siho:20200429121819p:plain

丹波篠山のキャラクター、デカボー(でかんしょ祭りと黒豆)、まるいの(いのししの侍)、まめりん(黒枝豆の妖精)

 

<大家さんに関係するもの>つづき

次のものは、大家さん(建物の賃貸人)として注意すべき規定になります。

 

民法 465条の4

個人根保証契約の元本確定事由

 

民法では、建物の賃貸借の保証(個人根保証契約)についても、

元本確定事由として、

「主たる債務者の死亡」

「保証人の死亡」

が規定されています(改正前民法では貸金等根保証契約だけで、建物の賃貸借の保証のような個人根保証契約にはありませんでした)。

保証する債務の元本が確定すると、それ以後に発生するものは保証されなくなります。

「借主である主たる債務者の死亡」が元本確定事由になっていますので、保証人は、借主が死亡した時点の保証債務のみ負担することになります。

「保証人の死亡」が元本確定事由になっていますので、保証人の相続人は、保証人が死亡した時点の保証債務のみを承継し、保証人としての地位は引き継がないということになります。

ですから、死亡した時点で家賃の滞納等がまったくなく、その他、損害がない場合は、保証債務は「なし」で確定ということになります。

特に「保証人の死亡」というのは大家さんには分からない場合がありますので、保証人の死亡で元本が確定され保証人の相続人は、その後のものは引き継がない(保証人の地位は承継しない)ということで、いつのまにか、保証人がいないのと同じ状態になっていることが考えられます。

なお、主たる債務者である「借主」の死亡の場合は、保証債務は元本確定しますが、借主の地位(賃借権)は相続されますので、保証人が=相続人の場合、それ以後(死亡後)の家賃、損害金等は、(保証人としては負担しませんが)相続人としては負担することにはなります。

 

(個人根保証契約の元本の確定事由)
民法 465条の4

次に掲げる場合には、個人根保証契約における主たる債務の元本は確定する。ただし、第一号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
1 債権者が、保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。
2 保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。
3 主たる債務者又は保証人が死亡したとき。
②前項に規定する場合のほか、個人貸金等根保証契約における主たる債務の元本は、次に掲げる場合にも確定する。ただし、第一号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
1 債権者が、主たる債務者の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。
2 主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。 

(保証債務に関する経過措置)
 施行日前に締結された保証契約に係る保証債務については、なお従前の例による(附則21条)。

 

その他

大家さんとしては、保証人に対しての

民法 458条の2で「主たる債務者(借主)の履行状況に関する情報提供義務」(保証委託がある場合)

民法 458条の3で「主たる債務者(借主)が期限の利益を喪失した場合における情報の提供義務」

の規定が定められているので、注意が必要。

もっとも、「すこしでも家賃の滞納があった場合は、すぐに(連帯)保証人にも連絡し請求する」という対応をしておけば大丈夫ということにはなります。

また、事業用の建物(店舗など)を賃貸する場合の保証については、

前ブログ

改正民法(債権法)2 - 司法書士とくの日記(ブログ) のとおり、

民法 465条の10で「契約締結時の情報の提供義務」の規定があり、これは(大家さんの義務ではなく)主たる債務者の借主が、保証委託をする保証人へ、(委託する際に)財産状況等の情報提供しなさいというものですが、それがきちんとなされておらず、大家さんがそれを知りえた場合などは、保証契約を取り消されるリスクがあるので注意が必要です。

 

つづく

改正民法(債権法)5 - 司法書士とくの日記(ブログ)

 

参考(当方の平成16年頃のホームページ記事)

・・・怖い連帯保証

家屋の賃貸借契約では、通常(多くの場合)、賃借人の負う債務について連帯保証人をたてることになっている。この連帯保証契約は、仲介業者が間にはいり、仲介業者が、賃借人に対し「連帯保証人になる方に署名押印してもらって下さい」ということで、連帯保証契約を賃借人に任せるようなかたちとなり、連帯保証人は、仲介業者や大家さんに会うことなく、連帯保証契約をしているケースも多いと思われる。家屋の賃貸借契約は、継続的な契約で、長期にわたる場合もあり、この連帯保証人の地位というのは、実は、非常に危険と言える。連帯保証人が親族などで賃借人の状況が常にわかるような場合はよいが、そうでない場合は、例えば何ヶ月も家賃を滞納し多額の滞納家賃が生じた後、突然、保証人に請求されたりする場合がある。「なぜ、もっと早く知らせてくれなかったのか」ということになる。家屋の賃貸借契約で保証人となる場合は、大家さんもしくは仲介業者に会って、「家賃を滞納するようなことがあればすぐに連絡下さい」と言っておいた方が良いし、それを可能であれば契約書に記載してもらっておいた方が良い。家賃滞納が始まれば、保証人としては、賃借人に状況を聞くことができるし、対策を立てることができる。今後もその滞納が続くような状況であれば、賃貸借契約を解除し(賃借人が解除するか大家に解除してもらう)損害の拡大を防ぎ、また大家に法的手続を取るよう催促することができる。ケースにより保証債務の拡大を防ぐため「保証契約」の解除が認められる場合がある。連帯保証人の債務は、滞納家賃、使用損害金、さらに目的物返還義務(ただ、保証人に明渡し義務まであるかどうかは消極に解する)と広いので注意が必要だ。

(平成16年記事)renntaihoshou