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改正民法(債権法)2

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丹波篠山市のマスコットキャラクター、まめりんとまるいの)

 

改正民法(債権法)について(つづき)

令和2年4月1日から施行の改正民法では、

保証契約する(保証人となる)際に、実際、(保証人として)保証することとなる金額(負担する金額)がはっきりしない「一定の範囲に属する不特定の債務」を保証する場合(これを根保証契約といいます)、(これまでの貸金等だけでなく)入院医療費の保証、家屋の賃貸借の保証、施設への入所契約の保証、身元保証などについても、その保証契約をする際には、保証契約書に「極度額」(上限額)の記載が必要となりました。

改正民法(債権法)1 - 司法書士とくの日記(ブログ)

この極度額の記載がない場合、なんと保証契約が無効となってしまいます(446条保証契約は書面でしなければ効力を生じない。465条の2極度額を定めない場合は効力を生じない)。

 

この極度額ですが、いくらぐらいにすればよいのか?

前ブログに記載したとおり、

入院医療の保証の場合は、30万円ぐらいを設定している病院が多いのではないかと思われます。

家屋(居宅)の賃貸借契約の保証はどれぐらいか?

家賃の滞納だけを考えるのであれば家賃の6カ月分ぐらいが目安となりますが、明け渡しまで(の損害)を考えると、大家さんとしては、(最低でも)家賃の12カ月分ぐらいの額は設定しておきたいところだと思います。

施設の入所契約の際の連帯保証はどうか?利用料の何カ月か分を基準にする?

子供が就職する際の就職先に対する親の身元保証なんかはむずかしいところだと思います。月給与の10か月分とか?

目安とする基準はこのようになることが多いと思いますが、契約書には、きちんと(基準から計算した)明確な金額(極度額 金〇〇〇〇〇円)を記載することになります(その方が明確になって良いと思われます)。

 

それから、次のような規定も設けられました。

債権者の保証人に対する、主債務者の履行状況に関する情報の提供義務について

主たる債務者がきちんと履行(入院費の支払、家賃の支払・・・)をしてくれていれば、良いですが、それがなされないときは、(連帯)保証人に負担がかかってきます。

よって、保証人としては、きちんと履行してくれているかどうかが一番の関心事ということになります。

民法458条の2

保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるもの全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。

 

滞納があるかどうかなどの情報を債権者から得ることができるということです。

 

<大家さんに関係するもの>

前は病院に関係するものでしたが、今回は、大家さんに関係するもの

家屋の賃貸借の保証については、上記のとおり「極度額」の設定が必要。

 

それから、居宅ではなく、店舗などの事業用物件の賃貸借については、注意が必要です。次のような規定が設けられています。

 

民法465条の10

主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない

1 財産及び収支の状況

2 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行の状況

3 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容

②主たる債務者が前項各号に掲げる事項に関して情報を提供せず、又は事実と異なる情報を提供したために委託を受けた者がその事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み又はその承諾の意思表示をした場合において、主たる債務者がその事項に関して情報を提供せず又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り又は知ることができたときは、保証人は保証契約を取り消すことができる。

③前2項の規定は、保証をする者が法人である場合には適用しない。

 

事業用の店舗を賃貸借する際に、その保証契約をする場合は、このように、借りる人(主たる債務者)が(委託する)保証人に対して、いろいろな情報を提供しなければならないことになっています。そして、これをしない場合等は、保証契約を取り消すことができる場合があると規定されています。

 

これだけの情報を提供しなければならないとなると、保証契約するのには大きな壁になると思われます。次の465条の6の規定のように、事業のための貸金の保証の場合は、保証意思確認のための「公正証書の作成」が義務付けられていることと合わせ、事業のための債務の保証は(保証人が大きな負担をかかえてしまう弊害があったため)できるだけできないように、しない方向での改正かとも思われます。

民法465条の6

事業のために負担した貸金等債務(金銭の貸渡し又は手形の割引をうけることによって負担する債務)を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のためにする負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前1箇月以内に作成された公正証書で保証人となろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。

ただし、465条の9で、保証人となろうとする者が、主たる債務者が法人の場合のその取締役や、主たる債務者が個人の場合の「共同して事業を行う者」、主債務者が行なう事業に現に従事している主債務者の配偶者などは除かれています。

なお、この465条の6の規定(保証人の保証意思を公正証書で明確にする)は貸金等債務が対象なので、家屋(居宅)や店舗など賃貸借契約の保証は含まれません。

 

保証のところの規定は、

(保証人保護の規定では)「法人(機関保証)は含まない(適用なし)」となっていることが多い、また、「(主債務者から)委託を受けている保証」かどうかで区別している、など

細かく規定されています。司法書士試験では出題しやすいかと思われます。

 

賃貸借のところの規定

・不動産の賃貸人たる地位の移転 新民法605条の2、605条の3

・賃貸人による修繕等 新民法606条

賃借人の責めに帰すべき事由によって修繕が必要となった場合は、賃貸人の修繕義務がなくなることを明文化

・賃借人による修繕 新民法607条の2

必要なのに賃貸人が修繕してくれないとか、急迫の事情がある場合は、賃借人の方で修繕することができる旨の規定(その費用は賃貸人に請求できる608条)

・賃借人の原状回復義務 新民法621条

賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に服する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰すことができない事由によるものであるときは、この限りでない。

敷金

敷金の規定が新設されています。

民法622条の2

賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
 1 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
 2 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
 ②賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。

 

など、など

 

家賃の消滅時効 

家賃の消滅時効については、条文は変わりましたが、期間の変更はありません。

 

改正前の民法

169条(定期給付債権の短期証明時効)

年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他のものの給付を目的とする債権は、5年間行使しないときは消滅する。

(この規定は廃止)

 

民法166条

債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する

1 債権者が権利を行使することができることを知ってから5年間行使しないとき

2 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき

 

ちょっと、疲れたのでここの辺でやめます・・・

(つづく)

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