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改正民法(債権法)6

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(水色の妖精)

 

<お金の貸し借りに関係するもの>

金銭消費貸借契約は、改正前の民法では金銭を渡して(受け取って)成立するもの(要物契約)とされていましたが、新民法で、お金の受け渡しがなされていない場合でも、書面での合意があれば、合意の時点で金銭消費貸借契約が成立するとしました。

(消費貸借)

民法 第587条(この規定は改正前と同じ)
消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

(書面でする消費貸借等)
民法 第587条の2
前条の規定にかかわらず、書面でする消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
②書面でする消費貸借の借主は、貸主から金銭その他の物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。この場合において、貸主は、その契約の解除によって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。
③書面でする消費貸借は、借主が貸主から金銭その他の物を受け取る前に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは、その効力を失う。
④消費貸借がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その消費貸借は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。

 

抵当権設定契約の登記原因証明情報(まだ、お金を受け取っていないときの抵当権設定)

1例

登記申請情報の要項(略)

登記原因となる事実・法律行為

(1)AとBは、令和2年4月1日、書面により、次のとおりの金銭消費貸借契約を締結した。

債権額、利息、損害金

債務者 B

(2)AとBは、令和2年4月1日、上記(1)の契約に基づく債権を担保するため、Bの所有する本件不動産に抵当権を設定する旨の合意をした。

(3)よって、本件不動産に同日抵当権者をAとする抵当権が設定された。

 

保証関係

事業用資金を貸す場合の個人保証については、保証意思を明確にするため「公正証書の作成」が必要

前ブログ、改正民法(債権法)2のところでも触れたように

改正民法(債権法)2 - 司法書士とくの日記(ブログ)

事業用資金の貸し借りの場合で、保証人をつける場合、原則、公正証書の作成が必要になります。

 

民法 465条の6

事業のために負担した貸金等債務(金銭の貸渡し又は手形の割引をうけることによって負担する債務)を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のためにする負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前1箇月以内に作成された公正証書で保証人となろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。

ただし、465条の9で、保証人となろうとする者が、主たる債務者が法人の場合のその取締役や、主たる債務者が個人の場合の「共同して事業を行う者」、主債務者が行なう事業に現に従事している主債務者の配偶者などは除かれています。

なお、この465条の6の規定(保証人の保証意思を公正証書で明確にする)は貸金等債務が対象なので、入院治療費の保証、家屋(居宅)や店舗など賃貸借契約の保証、施設入所の保証、身元保証などは含まれません。保証人が法人の場合も除外(3項)。

 

このように公正証書までして、きちんと保証意思の確認が必要とされましたので、実際、事業資金の貸し借りで、第三者が保証人になるケースは減るのではないかと思います(ほとんどなくなる?)。

 

また、同じく

前ブログ、改正民法(債権法)2のところでも触れたように、

事業用資金の貸し借りの場合、主たる債務者は、保証人へ委託する際、財産や収支の状況などの情報を提供しなければならないとなっています。

民法 465条の10

主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない

1 財産及び収支の状況

2 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行の状況

3 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容

②主たる債務者が前項各号に掲げる事項に関して情報を提供せず、又は事実と異なる情報を提供したために委託を受けた者がその事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み又はその承諾の意思表示をした場合において、主たる債務者がその事項に関して情報を提供せず又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り又は知ることができたときは、保証人は保証契約を取り消すことができる。

③前2項の規定は、保証をする者が法人である場合には適用しない。

(なお、この規定は、事業用不動産の賃貸借の保証は含みます。個人、事業性、保証委託ありの場合)

 

さらに、債権者の保証人に対する、「主債務者(借主)の履行状況に関する情報」の提供義務(458条の2)や、「主たる債務者(借主)が期限の利益を喪失した場合における情報」の提供義務(458条の3)が規定されています。

 

民法 458条の2

保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるもの全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。

(主債務者の履行状況の情報は、保証人にとっては一番の関心事でもありますので、この規定は、保証委託のある保証すべてに適用があります(保証人が「法人」の場合も含まれます)。保証委託のない保証が除かれているのは、主債務者の委託を受けていない、主債務者の知らないところで保証がなされている場合は、自分の情報が、義務として、そのような保証人に知らされるのは、どうか?ということで、除かれているのだろうと思います)

 

民法 458条の3

主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その利益の喪失を知った時から二箇月以内に、その旨を通知しなければならない。
②前項の期間内に同項の通知をしなかったときは、債権者は、保証人に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失した時から同項の通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く。)に係る保証債務の履行を請求することができない。
③前二項の規定は、保証人が法人である場合には、適用しない。

(この規定は、法人を除く個人保証すべてに適用があります。保証委託がないものも含みます)

趣旨は、主たる債務者に滞納があった場合は、(損害金がどんどん膨らんでしまうので)早期に保証人にも連絡、請求しようね、というものです。保証人が法人の場合は適用なし、なのがよくわかりませんが、保証契約の際、同じような規定を特約などで決めることができるからか、と思います。

保証の規定(保証人保護の規定)では、保証人が法人の場合、多くが除かれています(適用なし)。

 

施行日前に締結された保証契約に係る保証債務については、なお従前の例による(附則21条)。

 

その他

連帯保証人に対する履行の請求については、改正前は、その効力は主たる債務者にも及ぶ(絶対効)、とされていましたが、改正民法では、原則、及ばないとされています(相対効)。ですから、連帯保証人に請求し、保証債務につき時効の完成猶予・更新になっても、主たる債務については、時効の完成猶予・更新にはなりません。一生懸命、連帯保証人のみに請求をしても、主たる債務者にしないと、主たる債務につき時効が完成してしまうと、連帯保証債務も主たる債務の時効完成により請求できなくなったりします(ただし、これは任意規定なので、お金の貸し借りの際に特約で「及ぶ」とすることは可能)。平成16年記事 renntaihoshou

時効の停止→(新民法)完成猶予

時効の中断→(新民法)更新

 

その他

法定利率

貸金の場合は、利息の定めがなされていること多いので、影響は少ないかと思われます。

(法定利率)
 新民法 404条
利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
法定利率は、年三パーセントとする
③前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、三年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。
④各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。
⑤前項に規定する「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の六年前の年の一月から前々年の十二月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が一年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を六十で除して計算した割合(その割合に〇・一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。

関連条文

412条

417条の2

419条

消費貸借の利息

589条

すこし、疲れたので、この辺でやめます。

最後、条文提示で、お茶を濁しました・・・

つづく

改正民法(債権法)7(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予) - 司法書士とくの日記(ブログ)

メモ(消滅時効と利息など) - 司法書士とくの日記(ブログ)

 

改正民法(債権法)1 - 司法書士とくの日記(ブログ)

改正民法(債権法)2 - 司法書士とくの日記(ブログ)

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