司法書士とくの日記(ブログ)

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備忘録(取締役が1名となった場合、代表権付与、就任?)

台風10号が迫っていますが、進行がゆっくりでいつぐらい直撃するかはっきりしないので、予定がたてにくくなっています。

 

さて、備忘録

代表権付与か就任か - 司法書士とくの日記(ブログ)

株式会社(取締役会非設置会社)

取締役AB、代表取締役

で、取締役Aが辞任し、取締役がBの1名となった場合

取締役Bが当然に代表取締役になるかどうか?

 

定款の規定

定款に、次の123456のどれかと同趣旨の規定があれば、取締役が1名になった場合、(定款の規定により当然)その取締役が代表取締役になる(代表権付与)と言われています。

1、「当会社に取締役を複数置く場合には、代表取締役1名を置き、取締役の互選により定める。」

2、「当会社に取締役が2名以上ある場合は、代表取締役1名を置き、取締役の互選により定める。」

3、「当会社に取締役2名以内を置き、取締役の互選により代表取締役1名を置く。」

4、「当会社に取締役3名以内を置き、取締役の互選により代表取締役1名を置く。」

5、「取締役1名のときは、当該取締役を代表取締役とする。」

6、「代表取締役を社長とし、会社の業務を執行する。取締役1名のときは、当該取締役を社長とする。」

 

1234は、(定款で取締役1名のみを認めており)取締役が複数名の場合は(取締役の互選により特に)1名を代表取締役とするが、複数名ではなく1名の場合は当然、その者が代表取締役である趣旨と解されています。

 

しかし、次の規定の場合は、取締役が1名になったとしても、その者が当然には代表取締役にはならないとされているようです。

「取締役が2名以上ある場合は、そのうち1名を代表取締役とし、株主総会の決議によってこれを定める。」

(定款で取締役1名のみを認めているところは同じですが)上記2の場合と異なる点は、「株主総会の決議によって」の点になります。

取締役の互選で代表取締役を決めている(選定している)ということは、「別機関で特に定めている」ということで、もともとは取締役=代表権ありの意味合いが強い(株主総会では代表権ありとして選任している)→よって、代表権は当然に復活する

取締役選任と同じ株主総会代表取締役を決めている(選定している)ということは、同じ株主総会で代表権をはく奪しているので、(平の)取締役=代表権なしという意味合いが強い(株主総会で代表権なしとしている)→よって代表権は当然には復活しない

という違いがあるからであろうか?

それとも、まったく逆で「互選規定がある場合」は株主総会での取締役選任は代表権のない取締役として選任されており、互選で初めて代表となる?、であれば当然復活というより、1名の場合は互選が不可能だから単純に1名の場合はその者が代表取締役にならざるを得ない、と考える?

定款で代表取締役を定めている場合も株主総会で選定した場合と同様、当然に代表取締役になるということはありません。

ただし、取締役の互選でも

「当会社に取締役2名以上を置き、取締役の互選により代表取締役1名を置く」

「当会社に取締役2名を置き、取締役の互選により代表取締役1名を置く」

などの場合は、取締役は必ず2名以上や2名を置かなければならず、取締役が1名となってしまった場合は、新たな取締役を選任した上、その内、1名を取締役の互選で代表取締役に選定する必要があります。

 

定款の規定により、1名となった取締役が当然に代表取締役になる場合は「代表権付与」(この場合でも「就任」とする考え方あり)→登記申請は、定款などを添付

そうでない場合は、取締役1名になった場合でも、(あらためて)その人を代表取締役に選任が必要で、「就任」となる。→登記申請は、株主総会議事録など添付

 

一例(定款の規定により代表権復活)

株式会社(取締役会非設置会社)

取締役AB、代表取締役A(Aは印鑑届出をしている代表者)

代表取締役Aは取締役の互選で代表取締役に選定されている

で、取締役(兼代表取締役)Aが辞任し、取締役がBの1名となった場合

 

定款の規定

「当会社に取締役を複数置く場合には、代表取締役1名を置き、取締役の互選により定める。」

 

取締役A 辞任

代表取締役A 辞任か(資格喪失により)退任

代表取締役B 代表権付与(もしくは就任)

 

添付書類

Aの辞任届(会社届出印を押印するか、個人の実印を押印し個人の印鑑証明書添付)

定款

その他 印鑑届出書、Bの個人の印鑑証明書

(この、定款の規定により取締役1名となった者が当然に代表取締役になる場合でも、次の例のように定款を添付せず株主総会代表取締役になる旨の決議をしてもよいかと思われる)

 

一例(代表権は当然には復活しない)

株式会社(取締役会非設置会社)

取締役AB、代表取締役A(Aは印鑑届出をしている代表者)

代表取締役Aは株主総会代表取締役に選定されている

で、取締役(兼代表取締役)Aが辞任し、取締役がBの1名となった場合

 

定款の規定

「取締役が2名以上ある場合は、そのうち1名を代表取締役とし、株主総会の決議によってこれを定める。」

(取締役1名のときは、当該取締役を代表取締役とする、などの規定はない)

 

取締役A 辞任

代表取締役A 辞任か(資格喪失により)退任

代表取締役B 就任

 

添付書類

1、Aの辞任届(会社届出印を押印するか、個人の実印を押印し個人の印鑑証明書添付)

2、株主総会議事録(Bが代表取締役となる旨の決議)

取締役ABが出席している場合、Aが会社届出印を押印しているときは他の出席取締役Bは認印でもかまわない。Bのみが出席の場合(Aが会社届出印を押印できない場合)、Bは個人の実印を押印し個人の印鑑証明書添付

会社届出印=法務局へ届出ている印鑑

3、株主の氏名又は名称、住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト)

株主総会代表取締役を選任しているので代表取締役の就任承諾書は不要かと思われますが、実務上、就任承諾書(個人の実印押印)を取得しておいた方が無難か(もしくは株主総会議事録に「席上、就任承諾した」旨とBの個人の実印押印で議事録の記載を援用)

その他 印鑑届出書、Bの個人の印鑑証明書(申請に添付した場合援用可)

印鑑届出の関係でBの個人の実印押印、個人の印鑑証明書は必要となるのだから、議事録にはBの個人の実印押印、就任承諾書も取得しておくのが無難。

 

なお、例えばAが取締役の地位はそのままで代表取締役の地位のみ辞任する場合

代表取締役Aが株主総会代表取締役に選定されている場合は、辞任につき株主総会の承認決議が必要とされています。この場合、取締役はまだAB2名なので、内1名Bを代表取締役に選定することになると思われます。

株主総会で選定されている場合、代表取締役の地位のみの辞任は勝手にできず株主総会の承認が必要とされていることとパラレルに考えると、株主総会選定の場合、(1名になっても)代表権は復活せず、あらためて株主総会の承認決議が必要とされているのもなんとなく納得できるような・・・?

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