司法書士とくの日記(ブログ)

司法書士業務、マラソン、その他

破産した場合、滞納している電気料金はどうなる?

破産申立をしたとき、もし滞納している電気料金やガス料金などがあった場合どうなるか?
 
継続的給付を目的とする双務契約については、
破産法で特別な規定がなされています。
電気、ガス、水道、電話の供給契約が典型的なものになります。
その請求権が、電気料金、ガス料金、水道料金、電話料金になります。
(ただし水道料金の下水道料金は別で、公租公課と同じになります)
 
破産法
(継続的給付を目的とする双務契約)
第五十五条 破産者に対して継続的給付の義務を負う双務契約の相手方は、破産手続開始の申立て前の給付に係る破産債権について弁済がないことを理由としては、破産手続開始後は、その義務の履行を拒むことができない。
2 前項の双務契約の相手方が破産手続開始の申立て後破産手続開始前にした給付に係る請求権(一定期間ごとに債権額を算定すべき継続的給付については、申立ての日の属する期間内の給付に係る請求権を含む。)は、財団債権とする。
3 前二項の規定は、労働契約には、適用しない。
この法律において「財団債権」とは、破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権をいう。
免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。
この法律において「破産債権」とは、破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(第九十七条各号に掲げる債権を含む。)であって、財団債権に該当しないものをいう。
 
例えば、滞納している電気料金があった場合、破産申立て前の滞納分については、破産債権となり免責対象で、その滞納をもって、破産手続開始後、電気供給契約の継続を拒むことはできないことになっています。電気が止められることはないということです。
ただし、逆に読めば、破産手続開始であれば拒むことができることになります。
(電気料金の滞納があって電気を止められたくない場合は、早く破産申立をして破産開始決定を得る必要があるということなります。それができないとか、すでに止められている場合は、他の検討が必要になります。ただ現在は、電気等の供給会社は複数あるので乗り換えで対処できる場合があるかもしれません)
それから、申立て後、破産手続開始前の分については財団債権となります。
財団債権になると、破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができ、免責の対象にもなりません。
この申立て後、破産手続開始前の分の滞納をもってする場合は、供給を拒むことができると読むことができます。
この財団債権となって免責対象にもならない(供給を拒むことができる)範囲には、「申立ての日の属する期間内の給付に係る請求権」が含まれますので注意が必要です。
この辺は1か月程度のものなので、実際、電力会社の対応はそこまで厳しいものにはならないかもしれませんが、一応注意が必要と思われます。
破産申立て後、管財事件指示となり、管財費用の積立中に電気料金を滞納した場合は、申立て後、破産手続開始前のものになりますので、この分は財団債権で免責にはならないということになります。電気が止められるリスクはあります。
もちろん、破産手続き開始後にも滞納している場合は、この滞納分は免責されませんし、供給は止められることになります。
 
(まとめ)
破産申立前の滞納分→免責対象・破産開始決定後に電気を止められることはない
破産申立
破産申立後、破産開始決定前の滞納分→免責されない・電気を止められるリスクあり
破産開始決定
破産開始決定後の滞納分→免責されない・電気を止められるリスクあり
 
なお、個人破産の場合、電気・ガス・上水道の供給は日用品の供給として、破産申立前6カ月分が一般先取特権の対象になり、優先的破産債権とされる可能性があります(民法306条4号、310条)。優先といっても破産債権なので免責対象になります。
(一般の先取特権
第三百六条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
一 共益の費用
二 雇用関係
三 葬式の費用
四 日用品の供給
(日用品供給の先取特権
第三百十条 日用品の供給の先取特権は、債務者又はその扶養すべき同居の親族及びその家事使用人の生活に必要な最後の六箇月間の飲食料品、燃料及び電気の供給について存在する。
 
継続的給付を目的とする双務契約には、家屋の賃貸借契約などは含みません。
ですから、滞納家賃ついては、通常の破産債権と同様、破産手続き開始決定時で区別され、破産手続き開始前の滞納家賃や賃貸借契約解除後の損害金については破産債権で免責対象となります。破産手続き開始後の滞納家賃や損害金については、原則、免責対象にはなりません。
 
今回、同時廃止で破産申立したけれど管財指示があり、管財費用を積立てている6か月ぐらいの間(申立て後、破産開始決定前)に、光熱費の滞納、家賃滞納により家屋明渡の強制執行があり、この辺はどうなるのか調べてみました。