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払込があったことを証する書面5

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長女はコロナの濃厚接触者になってからは、(自宅待機から解除され普通の生活に戻っても)「私がもし明日コロナで発熱したら、今、会っているこの人たちは濃厚接触者となり、長期の自宅待機になってしまう」ということを意識するようになり、かなり神経質になっています。実家に帰ってきても常にマスクをしています。

それまではあまり気にせず人に会って遊びまくっていたのに・・・

 

話しは変わって・・・

インボイス制度導入(令和5年10月1日)の関係で、消費税の2年間免除(資本金1000万円未満等の会社)を得るためには令和3年10月までに会社設立するのがよい(メリットがある)らしく、(税理士の先生からの紹介で)会社設立の依頼が多くなっています(もちろん消費税が得になるからという理由だけで法人化することはないと思いますが・・・)。インボイス制度が導入されると多くの場合、インボイス(適格請求書)発行のため消費税課税業者にならざるを得なくなります。

 

さて、株式会社設立(発起設立)の際の払込証明書について

発起設立(発起人がすべての株式を引き受け、他に株主を募集しない設立)の場合、払込をした通帳のコピー(通常、通帳の表紙と、口座番号、名義などが記載されている開いた個所と払い込みの該当ページの3枚)を証明書と合綴して、出資金(資本金)の払込の証明書(設立登記申請の添付書類)とすることができます。なお、募集設立の場合は、金融機関発行の払込金保管証明書が必要となります。

 

1、払込をする通帳の名義

基本は、発起人の個人名義のものになります。発起人が複数いる場合は、(代表)発起人の一人の口座に入金か振込をします。ただし、各発起人が自分の口座(もしくは他の発起人の口座)にそれぞれ自分の分を入金か振込するのでも証明書としては認められています(そのすべての通帳を合綴します)。

発起人でない、(代表)取締役名義の通帳に払い込みをする場合は、発起人からその取締役への委任が必要になります(設立登記の添付書類として発起人からの委任状が必要)。

 

発起人の委任状(例)

発起人は、株式会社〇〇の設立にあたり、下記の設立時発行株式の払い込みにつき、次の設立時取締役である〇〇〇〇に、その払込金全額の受領権限を委任し、次の設立時取締役である〇〇〇〇名義の預金口座へ払込をすることを了承するものとします。

設立時取締役 住所 氏名

払込みをする口座

〇〇銀行〇〇支店 普通預金口座 口座番号

名義 〇〇〇〇(〇〇〇〇 〇〇〇〇)

発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数及び引き換えに払い込むべき金銭の額

発起人〇〇〇〇 普通株式 〇〇〇株 金〇〇〇万円(1株につき金〇万円)

発起人〇〇〇〇 普通株式 〇〇〇株 金〇〇〇万円(1株につき金〇万円)

令和3年〇月〇日 株式会社〇〇

発起人〇〇〇〇 印

発起人〇〇〇〇 印

*発起人一人からの委任でもOKです。

*発起人や設立時取締役の全員が日本国内に住所を有していない場合は、特例として、通帳の口座名義人は発起人及び設立時取締役以外の者でも差し支えないとされています(発起人からの委任は必要、発起人一人からの委任でもOK)。

 

個人事業の際の肩書のついた口座

設立する会社と同じ名称のものであれば、認められやすい。

例 設立する株式会社 とく産業株式会社

発起人 田中花子

払込をする口座名義 とく産業 代表者 田中花子

これはOKと思われる。

肩書が、設立する会社の名称と異なる場合は、個人名義とはいっても認められない可能性があります。

 

2、払込の方法、額

発起人が一人の場合は、自分の口座に自分で入金するかたちになります。

口座の残高が出資額以上あっても、(出資の判る定款等の作成日以降の日で)日付と入金を確認できないとダメなので、(同じ口座内で)出金するなどして、あらためて入金することになります。

 

発起人が複数いる場合

例えば 発起人ABCの3名の場合

発起人A 出資額100万円

発起人B 出資額30万円

発起人C 出資額20万円

合計 150万円

発起人A名義(もしくはB名義かC名義)の口座に、それぞれが100万円、30万円、20万円振込(もしくは入金)

発起人A名義(もしくはB名義かC名義)の口座に、合計の150万円を一括で振込(もしくは入金)

発起人A名義(もしくはB名義かC名義)の口座に、100万円、50万円を振込(もしくは入金)

発起人A名義(もしくはB名義かC名義)の口座に、50万円、別の日に50万円、また別の日に50万円を振込(もしくは入金)

出資金を預かって使者として振込や入金することも考えられるので、上記はどれでもOKとなります。振込でも入金(預入)でもどちらでもOK

また、何か別のものといっしょに振込もしくは入金することもあるので、振込もしくは入金されている額は、出資額以上であればOK(例えば、150万円ではなく180万円一括入金など)

出資金の入金もしくは振込後、(設立費用のため)出金することは可能です(いったん出資金がきちんと入金か振込されていれば、その後の出金等により口座残が出資金額未満となっていても大丈夫です)。

設立登記の添付書類として認められるかどうかについては、このようにかなり緩和されていて、なんでもありという感じですが(現在は押印すら不要となっています)、ただし、あくまで設立時代表取締役が証明しているという前提があるためで、基本は、(決められた発起人口座に)発起人がそれぞれ振込をするということになるとは思います。

 

もし、払込証明がこれではダメとなると、設立登記申請後の入金では認められないので(補正ができないので)、いったん取り下げて申請し直しとなり、会社設立日が異なることになってしまいます。この辺は緩和されているとはいっても怖いところです(不安な場合は法務局に確認するのが無難です)。

その点、合同会社の場合は、(払込取扱機関を強制していないため)

通帳合綴ではなく払込金受領書などの領収書のようなかたちのものでもOKとなっていて、この辺の怖さはありません。

 

2008-12-10

2012-04-19

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