司法書士とくの日記(ブログ)

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登記申請の委任状の日付について

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すこし暖かくなったなと思ったら、寒波で急に寒くなりました。

ランニングは、寒いと無意識にペースが速くなります。最近は五十肩の痛み止め(薬)をずっと飲んでいるせいか(もしくは年のせいか)、楽に走るのがむずかしくなっています。

 

さて、

法務省のホームページ内の商業・法人登記の申請書様式で、

本店移転登記申請の案内で次のようなものがあります。

 

登記すべき事項 別紙

「本店」〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号
「原因年月日」令和〇年〇月〇日移転

変更後の本店を記載します。
日付は、変更の決議をした議事録に記載されている移転の時期(実際に移転した日)を記載します。
なお、本店移転の日より前に、本店移転の登記の申請をすることはできません。

 

まだ本店移転していない段階で、本店移転の登記は申請できませんよ、という(司法書士からすると)当たり前のことが注意として記載されています。おそらく、こういう申請がよくあるから、このような注意がなされているのだと思います。

 

例えば、4月1日本店移転は、もう決定事項(決議済み)だから、早めに申請しておこうと、株主総会議事録、取締役会議事録、もしくは取締役の過半数の一致を証する書面を作成して、4月1日本店移転(予定)として3月30日に申請してしまう、とか?(これは、取下げして4月1日以降にあらためて申請してください、になってしまいます)

 

さて、一方、委任状の話・・・

登記申請の(司法書士への)委任状の日付について

登記申請の委任状の日付けは、通常、その登記原因が生じてから委任するので、登記原因の日付以降(同日はOK)の日付になります。

しかし、例えば、(不動産の)売買を原因とする不動産登記で、多くが売買代金決済の日が所有権移転日になっていますが、その取引・決済日に売主さんが事情により出席できない場合、事前に委任状にご署名、ご捺印いただくケースがあります。この場合、委任日は所有権移転の原因(売買)日よりも前の日付になってしまいます(もっとも、このようなケースでは、日付を空欄にしておいてもらって、後で決済日を入れることが多いですが・・・)。

また、売主さんが海外在住であった場合、事前にサイン証明をもらう関係で、委任日(委任状の日付)が所有権移転の原因(売買)日よりも前の日付になる場合があります。

このような登記原因日よりも前の日付の委任状であっても、不動産登記では、委任事項(登記事項)が(具体的に)記載された委任状であれば、条件付委任・始期付委任として認められています(月報司法書士2013.11No501.P53)。ただし、委任事項が「令和〇年〇月〇日付登記原因証明情報記載のとおりの所有権移転登記」というように将来日付の登記原因証明情報記載のとおりとなっている場合は、認められていません。まだ作成されていない書類記載のとおりというのは変で、委任事項が不明になっているからです。

 

一方、商業・法人登記の場合は、このような登記原因よりも前の日付の委任状は認められていないと思われます(明確な先例等はないよう)。商業・法人登記の委任状は、委任事項が「取締役の変更」などのように登記事項が具体的に記載されていないものが多いのも関係しているかもしれません。