司法書士とくの日記(ブログ)

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破産の非免責債権(租税等の請求権)について

破産しても免責されない「非免責債権」の一つとして、
「租税等の請求権」があります。


これは、
国税徴収法または国税徴収法の例によって
徴収できる請求権」
と定義されています。


地方税の徴収は国税徴収の例によりますので、
地方税の徴収、
及び地方税の徴収の例によると規定されているものは、
含まれるということになります。


破産申立(同時廃止)の際に添付する
「滞納公租公課一覧表」に例示されているものは
典型的な「租税等の請求権」なります。


滞納公租公課一覧表

所得税
住民税
固定資産税
事業税
国民健康保険
年金
自動車税
相続税


税金、社会保険料(健康保険料、介護保険料、
金保険料(国民年金、厚生年金))
などが含まれます。


その他
ちょっと意外な感じはしますが、
下水道使用料
公立保育所(私立の認可保育所含む)の保育料
なんかも含まれます。
都市計画法児童福祉法地方税の徴収の例による」)


生活保護に関して、
生活保護の費用返還金(費用返還債権)は
非免責債権(租税等の請求権)には
含まれませんが(生活保護法63条)、
(注)ただし追記あり


生活保護の徴収金(費用徴収債権)は含まれます。
生活保護法)
徴収金は、この法律に別段の定めがある場合を除き、
国税徴収の例により徴収することができる(生活保護法78条)。
生活保護法78条
不実の申請その他不正な手段により・・・
偽りその他不正の行為によつて・・・
偽りその他不正な手段により・・・
と規定があり、すこし悪質なものは、この徴収債権になります。


年金に関して、
生活保護と同じように、
年金の不正利得の徴収債権は含まれますが、
国民年金法)
年金の不正利得の徴収(国民年金法23条)
保険料その他この法律・・・の規定による徴収金は、
この法律に別段の規定があるものを除くほか、
国税徴収の例によつて徴収する(国民年金法95条)。


年金給付の過誤払による返還金は
含まれないように思われます。
(探しましたが、国税徴収法の例によるという規定が見当たらない)


あと、労働保険に関して、
労働保険料は含まれますが、
労働保険の保険料の徴収等に関する法律
労働保険料その他この法律の規定による徴収金を納付しないときは、
政府は、国税滞納処分の例によつて、これを処分する
労働保険の保険料の徴収等に関する法律27条)。


失業手当の不正受給の返還についても、
上記の労働保険の保険料の徴収等に関する法律27条
が準用されていますので、含まれます。
滞納処分をされていた例がありました。
雇用保険法
偽りその他不正の行為により失業等給付の支給を受けた者がある場合には、
政府は、その者に対して、支給した失業等給付の全部又は一部を返還することを
命ずることができ、また、厚生労働大臣の定める基準により、
当該偽りその他不正の行為により支給を受けた失業等給付の額の
二倍に相当する額以下の金額を納付することを命ずることができる(雇用保険法10条の4)。



非免責債権(破産しても免責されないもの)のうち、
「租税等の請求権」の例
所得税
住民税
固定資産税
都市計画税
事業税
自動車税
軽自動車税
相続税
贈与税
消費税
国民健康保険
介護保険
金保険料
下水道使用料
公立保育所(私立の認可保育所含む)の保育料
生活保護の徴収債権(生活保護法78条)
年金の不正利得の徴収債権(国民年金法23条、国民年金法95条)
労働保険料労働保険の保険料の徴収等に関する法律27条)。
失業手当の不正受給の返還金(雇用保険法10条の4、労働保険の保険料の徴収等に関する法律27条準用)
など


「租税等の請求権」に含まれないもの
(免責決定で免責されるもの)
上水道使用料
私立の無認可保育所の保育料
学童保育料、幼稚園保育料
公営住宅の家賃
公立病院の診療代
生活保護の費用返還金(生活保護法63条)
年金給付の過誤払による返還金
など


その他の非免責債権
・破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
・破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
・次に掲げる義務に係る請求権
民法第752条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
民法第760条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
民法第766条(同法第749条、第771条及び第788条において準用する場合を含む。)
の規定による子の監護に関する義務
民法第877条から第880条までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
・雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
・破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権
(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
・罰金等の請求権


民事再生(個人)
http://d.hatena.ne.jp/tokucyan-siho/20171231


追記
生活保護法の改正(平成30年10月1日施行)により、生活保護の費用返還金(費用返還債権)63条について、
生活保護法77条の2第2項で「国税徴収の例により徴収することができる」と規定されたため原則、非免責債権となっています。