司法書士とくの日記(ブログ)

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死因贈与で受贈者が先に死亡した場合

死因贈与契約
贈与の効力の発生時期を贈与者の死亡時にする契約
甲「私が死んだら(死亡時に)、この不動産を乙へ贈与する(申込)」
乙「わかりました(承諾)」
この契約につき、不動産に仮登記をすることができます。


不動産


所有者 甲


始期付所有権移転仮登記
平成〇〇年〇月〇日始期付贈与(始期 甲の死亡)
権利者 乙


と、死因贈与が仮登記されている場合


贈与者の甲より、
受贈者の乙が先に死亡してしまった場合どうなるのか。


死因贈与については、
民法554条において、その性質に反しない限り、
遺贈に関する規定を準用するとされています。
そして、遺贈の994条では、遺言者の死亡以前に
受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。
と規定されています。
これが、そのまま準用されるとすると、
死因贈与で、受贈者の方が先に死亡した場合は、
その効力を生じないとなります。


判例は分かれているようで、
京都地裁平成20年2月7日判決では、
この準用を否定し、受贈者が先に死亡したとしても、
その後、贈与者が死亡した場合、死因贈与は効力を生じる
としています。
水戸地裁平成27年2月17日判決も、
死因贈与契約を有効とした上、受贈者の相続人が取得すると
しています。


逆に、この準用を認め、
死因贈与で、受贈者の方が先に死亡した場合は、
その効力を生じないとした東京高裁平成15年5月28日判決があります。


準用を認めない場合は、
(遺贈と異なり契約なので)期待権があるとか、
準用を認める場合は、無償性、個別的な人間関係から遺贈と共通する
とかされていますが、どちらもそれなりに理由があるように思われます。
結論が分かれているのは、裁判になった、その具体的な事案によって、
その死因贈与をした背景や、贈与者の意思、受贈者やその相続人
の立場などが考慮され判決が出されているからだと思われます。


しかし、個別的事案によって異なるとなると、
登記をする場合は非常に困ります。


このケースで、贈与者の甲より受贈者の乙が先に死亡し、
乙の相続人から、この仮登記権利の相続登記を依頼された場合


準用され効力を失うとすると、
効力を失った権利を相続するのはおかしいので、
むしろ、仮登記の抹消登記を勧めることなってしまいます。
準用されず効力があるとすると、依頼どおり、
仮登記権利の相続登記をすることになります。


(まだ、甲がご存命の場合は、その方の意向を
確認して、可能であれば乙の相続人へ死因贈与
し直してもらうのが一番良いと思います)


その後、甲が死亡した場合で
甲の相続人から、この不動産の相続登記を依頼された場合
準用により、この仮登記は効力を失っているとすると、
そのまま、依頼どおり相続登記をし、この仮登記の抹消を
検討することになります。
準用されず効力があるとすると、相続登記はせずに、
この仮登記の本登記をする方向で検討することになるかもしれません。


乙の相続人から依頼された場合と
甲の相続人から依頼された場合で、
それぞれ期待するところは、多くが真逆になりますので、
どちらが正しいのかはっきりしないと
どう登記を進めてよいか、「さっぱりわからん」という
ことになります。


どちらでもないとすると、
リスクを説明した上、
とりあえずは依頼者の希望に基づく登記をすることになるのか?
それが正しいような気がします。
後で争いになった場合は裁判で決着をつけてもらうしかありません。


しかし、後でひっくり返った場合、
誤った登記をしたことなってしまうが、
この辺の司法書士の責任はいかに?
(乙の相続人と甲の相続人、両方の意向を確認しながらするのがよいのか?)
法務局に聞いても「申請があったとおりに登記をするだけ」
となるだろうな。


死因贈与による仮登記)
http://www.amy.hi-ho.ne.jp/sakai-siho/siinzouyo.htm


死因贈与で受贈者が先に死亡した場合(2))
http://d.hatena.ne.jp/tokucyan-siho/20180130