不動産登記
ある不動産の登記簿の記載
甲区
順位番号 1番
平成10年1月
共有者
持分2分の1 A
持分2分の1 B
順位番号 2番
平成15年1月
A持分全部移転
〇年〇月〇日相続
所有者 持分2分の1 B
乙区
順位番号 1番
平成10年10月
A持分抵当権設定
とあります。
甲区は所有権を現わしており、現在の所有者はBになっています。
このような不動産で、
乙区順位番号1番の抵当権が付いたままで、
「売買」を原因として、
BからCへ
所有権移転登記する場合
どのように登記をするか?
Bの所有権ですが、
甲区で、1番と2番で別れて登記されています。
1番(の枠)で持分2分の1取得、2番(の枠)で持分2分の1取得
順位番号で枠で別れているので、各順位番号は枠箱と言ってもよいかと思います。
そして、乙区を見ると、A持分に抵当権が設定されています。
甲区1番で登記されたB持分には抵当権設定はされていません。
そして、甲区2番で登記されたB持分は、A持分から移転を受けていますので、抵当権の効力が及び、抵当権が設定されているかたちになります。
甲区1番
B持分2分の1 ←乙区1番の抵当権の効力なし
甲区2番
B持分2分の1 ←乙区1番の抵当権の効力あり
登記の先例で次のものがあります。
「第三者の権利が登記された持分」と「そうでない持分」がある場合は、
別個の申請により各別の登記を申請しなければならない。
この先例からすると、
1件目 所有権一部(順位1番で登記した持分)移転 持分2分の1 C
2件目 B持分全部(順位2番で登記した持分)移転 持分2分の1 C
と2つに別けて申請をすることになります。
1個の申請(1件の申請)ではなく、別個に申請するということは順位番号(枠箱)が別れるということになります。
原因が売買で1つであるにもかかわらず、第三者(抵当権者)の権利が及んでいる部分と及んでいない部分を明確にし、抵当権の効力が及んでいる持分を、順位番号(枠箱)で特定するために、このように別けて申請することになります。
1件目の分 順位番号3番になります。
持分2分の1 共有者C ←乙区1番の抵当権の効力なし
2件目の分 順位番号4番になります。
持分2分の1 所有者C ←乙区1番の抵当権の効力あり
もし、その後、抵当権が実行された場合はどうなるか?
抵当権の効力が及んでいる枠箱は4番と明確になっていますので、
「所有権一部(順位4番で登記した持分)移転」になります。
それでは、売買ではなく、
Bが死亡して、相続登記をする場合は、どうなるか。
「第三者の権利が登記された持分」と「そうでない持分」がある場合は、
別個の申請により各別の登記を申請しなければならない。
ただし、移転の原因が相続の場合は、例外で、
「第三者の権利が登記された持分」と「そうでない持分」がある場合でも、相続の場合は1件の申請となります。
相続を原因とする場合は、所有権の一部を移転登記申請できないとされているからです(被相続人と相続人の共有状態は認められない)。
1件で申請
「所有権移転」
順位番号3番 所有者 C(相続人)
もし、その後、抵当権が実行された場合はどうなるか?
「所有権一部(順位2番から移転した持分)移転」になります。
順位番号3番の所有権は、抵当権の効力が及んでいる部分と及んでいない部分が含まれていますので、順位番号3番では(枠がなく)特定できないため、「順位2番から移転した持分」として特定することになります(特定せざるを得ません)。
追(参考)
BからCへの1件での相続登記ですが、
仮に、他に共有者がいて、このように枠(順位番号)が別れている場合
もし、Bの住所が1番と2番で異なるような場合は、(1件ですが)登記の目的が(単純に)「B持分全部移転」ではなく、「B持分全部(順位1番で登記した持分)、B持分全部(順位2番で登記した持分)移転」と登記されたりします。
ただし、他に共有者がいない場合、所有者なんだけれども住所が異なるため肩書が(形式上)共有者になっている場合、さすがに、「共有者全員持分全部移転」とか「B持分全部(順位1番で登記した持分)、B持分全部(順位2番で登記した持分)移転」とはならないと思いますが・・・(「所有権移転」で大丈夫か)。
追(参考)
甲区順位番号1番と2番で、Bの氏名の漢字が異なる場合(例えば、新字体と旧字体とか、正字と俗字で異なる漢字で登記された場合。氏名更正登記までは不要な場合)は、所有者は一人でも、登記記録上は同一人物ではなく、肩書は(住所が異なる場合と同様)共有者のままで、所有者にはなりません。次回、所有権移転登記する際、登記の目的は所有権移転ではなく「共有者全員持分全部移転」となります(他に共有者がいる場合は、漢字が異なる B、B持分全部移転になります)。