司法書士とくの日記(ブログ)

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これって本当にメリットあったんでしょうか?

「これって本当にメリットあったんでしょうか?」


ご主人(夫)がお亡くなりになり
ご主人名義の自宅不動産の相続登記の依頼に来られた方


自宅不動産の登記簿(全部事項証明書)を見ると
ご主人(夫)が持分2分の1、
妻が持分2分の1になっています。


2年ほど前に
夫単独名義だったのを、夫から妻へ
持分2分の1が贈与され、
結果、夫2分の1、妻2分の1になっていました。


ある専門家に、
配偶者の特例で贈与税がかからず(2000万円控除)、
相続税対策になるからと勧められ
登記をしたということでした。
(知り合いからも夫婦は共有にしておいて方がよいと
言われたということでした)


はたして
これ(2年ほど前にした妻への2分の1の移転登記)
をするメリットはあったのかどうか。


相続税対策でしたということですが、
亡くなった夫には、
(この自宅全部を含めても)相続税が発生するような遺産はありません。
ですから、相続税対策にはなっていません(相続税対策する必要がない)。
贈与した当時も今とほとんどかわらないということなので、
相続税対策でする必要はなかったということになります。
相続税では妻への相続は特例(税額軽減)があり、
また自宅であれば減税がききますので、この辺も考慮すると、
相続税対策にならないことが多い中、
この方は基礎控除内なので、まったくもってする必要がなかった
ということになります。


それから、お子様が二人おられますが、
遺産分割でもめるようなことは一切ありません。
(子がおらず、夫の兄弟姉妹甥姪が相続人になる場合などで
もめる可能性がある場合は、事前に妻へ贈与しておく
メリットはありますが、そのようなことはなく、
そうであったとしても、持分移転では中途半端な対策で、
また、遺言で解決できるものでもあります)
この点もメリットはなかったということになります。


また、夫に多額の負債があったということもありません。


贈与税はかからないにしても)
逆にデメリットとしては、
相続より贈与の方が登記の登録免許税が高くなります。
また、不動産取得税がかかります(相続ではかかりません)。
移転登記を司法書士に依頼した場合、その費用がかかります。
贈与税配偶者控除の特例を使う場合
申告が必要ですので、その分手間がかかります
(税理士に依頼すればその費用がかかります)。
贈与した当時、このような費用等がかかったと思われます。


この方は、結局、
(2分の1は所有者であるという漠然とした安心感以外は)
メリットはなかったということになります。