司法書士とくの日記(ブログ)

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会社法人等番号と代理権不消滅

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司法書士ねた


住宅ローンを完済した場合の
抵当権抹消登記などは、
その原因日(完済日)と法務局への登記申請日
との間が開く場合が多くあります。


住宅ローン完済後、
金融機関から抹消書類が交付されるのに
1週間〜2週間、
そして、抹消書類が届いてから
司法書士に依頼するまで、さらに期間が過ぎ、
実際申請するのは、完済してから1か月〜2カ月後
というのはよくあります。
債務者(所有者)が死亡して団信(団体信用生命保険の保険金)
で完済などの場合は、
相続が入ったりして、さらに期間がかかることになります。


金融機関から交付された
抵当権抹消に必要な書類の中に
解除証書などの登記原因証明情報や委任状があるのですが、
(この抵当権抹消登記を申請するまでの間に)
そこに記載された抵当権者の「代表者」が
申請時には変わっていることがあります。


以前(平成27年11月2日より前)は、
3カ月以内の代表者の資格証明書を添付して
申請していましたので、
その資格証明書に記載された代表者と
同じであれば、その証明書のチェック
(3カ月以内の証明書かどうかなど)だけで
安心して申請できていました。


しかし、平成27年11月2日以降は、
代表者の資格証明書は添付せず、
会社法人等番号」を提供して申請することになりました。
会社法人等番号を提供して申請すると、
法務局で、「申請時」の会社法人の登記情報を確認して、
申請書の添付書類の代表者と合っているかどうか
チェックされます。
そして、解除証書や委任状に記載された代表者が
申請時には変わっているというケースが発生したりします。


申請するまでの1か月か、2か月の間に
代表者が変わっているというケースです。


このような
代表者が変わってしまった場合でも、
解除証書や委任状に記載された時点では
代表者であったことが会社法人の登記情報で
判明する場合は、「代理権不消滅」
司法書士への委任の時点で代表者であれば
その後、代表者が変わっても司法書士の代理権は消滅しない)
の規定(不動産登記法17条)があり、
その解除証書や委任状はそのままでOK
(新しい代表者のものを金融機関からもらい直す必要はない)
でいけます。
ただし、解除証書や委任状に記載の日付の時に
代表者であったことが必要です。


この代理権不消滅の規定を使うケースというのは
以前はほとんどなかったのですが、
この会社法人等番号を提供するようになってからは
増えることとなります。


3カ月以内の資格証明書でいけていたのが、
平成27年11月2日以降は、
申請時のリアルタイムで代表者をチェックされる
ことになったからです。


そんなに代表者って変わるものか?
ということですが、
住宅金融支援機構代理人なんかは
よく変わります。
また、たまたま申請時期に変わることもあります。


もっとも、
委任当時(解除証書や委任状に記載の日付の時)
には代表者であったことが
会社法人の登記情報で確認できる場合、
「代理権不消滅」で
そのままでいけるのだから別にいいじゃないか
ということですが、
実は・・・


この代理権不消滅の規定が適用される場合は、
申請書の記載内容が異なってきます。
住宅金融支援機構の例)
義務者
東京都文京区後楽一丁目4番10号
独立行政法人住宅金融支援機構
代理人 〇〇〇〇(本件申請時の代理人 △△△△)
会社法人等番号 010005011502


その他の事項
義務者の代表者 代理人 〇〇〇〇の代理権限は消滅している。
代理権限を有していた時期は平成27年〇月〇日から平成28年〇月〇日である。
本件申請時の義務者の代表者は、代理人 △△△△である。


などと記載します。
なんと、なぜか申請時の新しい代表者の記載が必要となります。
住宅金融支援機構なんかは、代理人が多数いて
どれを記載するのか金融機関に確認しないとわかりません。
(適当な人を記載しておけばいいのか?)
この申請時の新しい代表者を記載するというのは
非常に違和感があります。
申請に関与していない人をなぜ記載するのか。
(商号や本店が変わっている場合は、その新しい
商号や本店を記載するのと同じようなものなのか)
よくわかりません。
(注)下記追加記載あり


ですから、
委任時(解除証書や委任状に記載の日付の時)
に代理権があったのかどうか、
申請時にはどうか、
を確認するため会社法人の登記情報を
見る必要が生じます。


申請書の記載が異なってくる
という意味でも
司法書士としては、
会社法人番号で会社法人の登記情報を確認することが
重要となります。


また、通常、
金融機関から交付される解除証書や委任状は
日付等は空欄になっていますので、
うっかり、記載の代表者が変わった以降の
日付を記載して申請してしまうと
取下げざるを得なくなったり、
新しい代表者のものを金融機関からもらい直す
必要が生じたりします。
ので注意が必要です。


3カ月以内の資格証明書を添付して申請していた頃
と違った実務対応が必要となります。


前ブログ(血の気が引く抵当権抹消)
http://d.hatena.ne.jp/tokucyan-siho/20160426



会社法人等番号に代え、1か月以内の資格証明書を添付すれば、
その資格証明書で確認してもらえるようになっていますが、
これは会社法人の登記が事件中(登記手続中で会社法人の
登記情報が見れない)場合を想定しているようです。
登記官は1か月以内の資格証明書を添付した場合でも、
その会社法人が事件中かどうか、
その資格証明書に記載された会社法人番号で会社法人の登記情報を
見て確認したりするのであろうか??


追(訂正)
上記
「申請時の新しい代表者の記載が必要となります。」
と書きましたが、
代理権限が消滅している代表者
(当時権限があった委任状等に記載されている代表者)のみの記載でも
大丈夫の法務局が多くあると判りました。
その場合は、義務者代表者は代理権限が消滅した代表者を記載し、
その他事項欄に
「義務者の代表者の代理権限は消滅している。
代理権限を有していた時期は平成〇年〇月〇日から平成〇年〇月〇日である。」
と記載
(ただし、申請時の代表者も記載要としている法務局もあります)


追(令和2年4月)
会社の印鑑証明書添付省略 - 司法書士とくの日記(ブログ)
会社法人等番号の提供により印鑑証明書の添付も省略できるようになりました。
合わせて、資格証明書を添付する場合、1か月以内のものではなく3ヶ月以内のものでよくなりました。