司法書士とくの日記(ブログ)

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議事録の援用について(就任承諾書)

私のHPに次のとおり掲載している。
http://www.amy.hi-ho.ne.jp/sakai-siho/gijirokujirei.htm


事例
株式会社(取締役会設置会社
取締役A(代表取締役
取締役B
取締役C
上記取締役が、平成20年6月27日に開催される
定時株主総会終結時に任期満了するケース

平成20年6月27日開催の定時株主総会
後任取締役として次の者が選任された。
取締役A(重任)
取締役B(重任)
取締役D(新任)

定時株主総会議事録
議長・出席役員(監査役含む)の氏名の記載が必要
議事録作成に係わる職務を行った取締役の氏名の記載が必要
押印は会社法上の要件とはなっていないが、
少なくとも議事録作成者である取締役の記名押印はしておいた方が
望ましい(実務上は、おそらく、議長・代表取締役が議事録作成者となり、
その者が法務局への届出印を押印しておくケースが多いと思われる。
もっとも定款に「議長および出席取締役が記名押印する」となっている場合は
それに従う)。

出席取締役としては、ABCを記載する
(もちろん、実際、出席した場合であるが)。
C(ABも)は本定時株主総会が終了するまでは取締役である。
Dは、後任として選任されている(予選の場合)ので、
本定時株主総会中は、取締役ではない。
したがって、Dは議事録に記載される出席取締役とはならない。
(本事例のような予選ではなく、本定時株主総会中ただちに就任するような
場合は、出席取締役となる)
もし、議事録で「議長および出席取締役が記名押印する」となっている場合、
ABCが記名押印し、Dは出席していても記名押印しない。
要は、総会中、取締役の地位にあったかどうかで区別される。


議事録中、ABDが本定時株主総会に出席し「就任承諾した」旨の記載
(「被選任者はいずれも即時その就任を承諾した」等)がある場合、
本定時株主総会議事録が就任承諾書の代わりになる(もちろん、実際、
その場で就任承諾している場合であるが)。
登記の際、「就任承諾書は議事録の記載を援用する」とする。
その就任承諾した者が、議事録に署名や記名押印しているかどうかとは
関係はないが、ただ、就任承諾した取締役ABが、
その総会に出席役員として記載されている必要はある
(その場で就任承諾しているのに出席していないのはおかしい)。


議事録に議事録作成者の取締役(例えばAのみ)の記名押印しかない場合でも、
ABDが本定時株主総会に出席し「就任承諾した」旨の記載がある場合、
本定時株主総会議事録が就任承諾書の代わりになる。
なお、Dについては、出席していても出席した「取締役」ではないが、
議事録に「就任承諾した」旨の記載があれば、出席した取締役として記載が
なくても、その議事録が就任承諾書の代わりになる。
以上



しかし、
月報司法書士1月号に、次のような「ある解釈」が載っています。
議事録に就任承諾した旨の記載があっても、当該役員が選任された
株主総会もしくは取締役会に出席していることが明らかでない場合は、
就任承諾書を添付すること(議事録援用ではだめ)。
具体的には「席上で」就任承諾した旨の記載があるか、
出席役員として記載されているなど、当該役員が出席している
ことが明らかな場合のみ就任承諾書の添付が省略できるが、
議事録に「即時就任承諾した」旨の記載があっても総会等に出席
していることが明らかとは取り扱われないので議事録作成の際には
充分留意するように・・・


この解釈からいくと、
新任取締役Dは、出席取締役ではないし(総会後取締役になる)、
記名押印もしていないとなると、
(即時就任承諾した旨では)
Dについては就任承諾につき議事録が援用できない
ということになる。


昔の実務では、「即時就任承諾した」旨の記載があれば、
援用できていたが、なぜ、このような解釈がでてきたのか?
(知らない間に取締役にさせられていた事件があり、
実務改善の要求があったのか?)
でも、よく考えると、文言などの形式上の改善にすぎないようにも思える。
「即時」と「席上」でどれほど違いがあるのか?
商業登記の真正担保は、会社からの申請(会社届出印の押印)に
負っている部分が多く、形式的な改善をしてみても
意味があるのかどうか?


この解釈で実務が動くとなると、
登記依頼の際、就任承諾書をきちんともらうなどの注意が必要となってくる。


なお、取締役会非設置会社の場合は、
新任取締役については、実印押印、印鑑証明書添付
が必要となるので、このような問題はあまり出てこない
ように思う。
改善というのであればいっその事、取締役会非設置会社と
同様に実印押印、印鑑証明書添付にすれば・・・