不動産の売買・移転登記が完了し、
買主に登記識別情報通知書を渡す際、
多くの司法書士は、
「これは重要なものです」
「以前の登記済証(権利証書)に代わるものです」
「法務局のシールははがさずに、(見ることなく)
そのまま保管するのが安全です」
「見られただけで、盗まれたのと同じになります」
などと説明したりします。
すると、次回、今度は売主として、
その不動産を売却する際、別の司法書士が、
「取引の前にその登記識別情報が有効かどうか確認する
必要がありますので、識別情報を教えてください」
というと、
「お金をもらう前に見せられない」
「シールをはがすのはいやだ」
「登記した時の司法書士は、見られただけで盗まれたのと
同じになるので、シールははがすなと言っていた」
と拒否されたりします。
説得するのに時間がかかります。
司法書士は、取引決済前に売主さんを訪ね、
シールをはがし、識別情報をメモするか、
通知書自体を預からなければなりません。
登記識別情報はパスワードみたいなものなので、
取引の前にそれが有効なのかどうか確認するため、
法務局に有効証明請求しなければならず、それは重要なことです。
しかし、登記識別情報は、
パスワードみたいなものとはいっても、
現在の実務では、通知書という紙に記載されて交付されます。
その紙は透かしが入った法務局専用用紙で登記官の印が押してあり、
識別情報の箇所には法務局専用のシールが貼ってあります
(一度はがすと再度貼ることはできなくなります)。
不動産、受付年月日・番号、登記の目的、名義人も記載されています。
そして、その紙を前の登記済証(権利証書)と同じように
唯一無二なものとして大事に取り扱ったりします。
紙自体には意味がないといっても、現実には現物があるような
感じです。
登記識別情報通知書(紙)=現物(前の登記済証のようなもの)
その紙があれば、発行されたことはわかります。
登記識別情報は再発行は絶対されません。
登記識別情報の怖いところは、いつでも失効できることだ
といいます。失効の手続には、その識別情報自体は必要ありません。
ですから、シールが貼られたままでも失効していることは
考えられます。
以前は、登記識別情報の有効証明請求しかできませんでしたが、
現在は、未失効証明(通知されており、かつ失効していないこと
が確認できるもの)の請求ができるようになっています。
正確には、
「登記識別情報が通知されず、又は失効していることの証明」
といいますが、逆に、通知されており、かつ失効していない
ことが確認できます。
これには、識別情報自体は必要ありません。
(司法書士が代理人として請求する場合、オンラインでは、
司法書士の電子署名だけでできます)
(有効証明請求についても、現在は、本人の委任状や印鑑証明書
が不要になっています)
であれば、取引前に登記識別情報通知書のシールをはがしたり、
司法書士に見せたりするのがどうしても嫌だという人
(こういう人がいるんです)については、
その現物+未失効証明で、ある程度対処できるということになります。
現物があるということは発行されているということ。
その現物は(精巧に偽造されていない限り)、本物であることは確認できる。
そして、失効していない証明が取れれば、そこに記載された登記識別情報は、
有効であるということになる。
(前の登記済証を確認していたレベル程度にはできそうです)
もちろん積極的に有効である証明を取得した方が安全ではあるが、
未失効証明を活用すれば、取引の場で、シールを貼ったままの
現物を預かることが可能になります。
これは、売主の信用度や、取引の内容などで対応は変わると
思われますが、
本人確認(意思確認も)をきちんとし、万が一の際、
後でも本人確認情報の提供ができるようにしておけば、
未失効証明の活用で、事前の有効証明請求は不要ということになります。
それじゃ、登記識別情報は無視して、すべて本人確認情報で対処すれば
いいじゃないかということになりそうですが、
本人確認情報は、法務局に提出できるようにきちんと整え作成するのは、
やはり手間隙がかかりますし(登記申請のスピード・迅速性が阻害される)、
http://www.amy.hi-ho.ne.jp/sakai-siho/tatiai.htm
登記識別情報があるのに(本人もそれで登記することに異存がないのに)
無視をするというのもどうかという気がします。
ただ、以前は、登記識別情報が提供できない正当な理由は、
不通知、失効、失念でしたが、現在はそれ以外に、
下記のものもOKになりましたので、本人確認情報で対処できる
範囲は広がりました。
「適切に管理する上で支障が生じる」
「不動産の取引を円滑に行うことができないおそれ」
ケースによっては、有効証明請求をしなくても、
現物+未失効証明で、対処できるということ。
といろいろ考えていました。
登記識別情報
http://d.hatena.ne.jp/tokucyan-siho/20070903
また登記識別情報
http://d.hatena.ne.jp/tokucyan-siho/20070913
またまた登記識別情報
http://d.hatena.ne.jp/tokucyan-siho/20071027