法テラス(日本司法支援センター)への相談で、
給与ファクタリングの被害相談が増えているように思います(当方、法テラスの審査委員をしており、最近、よく目にするので・・・)。
給与ファクタリングというのは
給与債権を買い取る契約ですが・・・
被害相談になっているような具体的な例としては、
例えば、給与支給前でお金に困っている方が、ある給与ファクタリングの業者に、20日後に入る給与債権(10万円分)を買い取ってもらい、手数料として1万円差引いた額の9万円を(給与債権の買い取り代金として)受け取る(手数料は10%)。そして、20日後に給与が入ったら、そこから10万円をその業者に支払うというような感じです。
(1)相談者A(給与所得者)→給与ファクタリング業者へ申込、契約
(2)(近いうちに勤務先から受け取ることになっている)10万円分の給与債権を9万円で売却(債権譲渡)
売主A→買主 給与ファクタリング業者へ10万円分の給与債権が移転
給与ファクタリング業者→Aが9万円受取
(3)20日後、Aに給与の支給がある
A→給与ファクタリング業者へ10万円渡す
(給与の前借のような感じになります)
債権譲渡としていますが、多くが、給与を支払う勤務先(給与を支払う債権の債務者にあたります)は関わらず、2者間(労働者である給与所得者と、業者)のみで契約をし、勤務先へは債権譲渡の通知などはしません(勤務先にはわかりませんというのをうたい文句にしています)。
業者側は、給与債権の買い取り(債権譲渡)で、金銭の貸付ではないから、貸金業法などの規制はあてはまらないと言いますが・・・
でも、お金を受け取って、給与日に支払うというのは、お金を借りたのとほとんど変わりません。この例では、貸金でいえば、9万円を借入(受け取り)、20日後に10万円を返済するのだから、異常な高金利とみることができます。
高金利の俗語としてトイチ(10日で1割)なんていう言葉がありますが、それに近いものがあります。
相談者は、このような給与ファクタリングを何件もしていたりします(繰り返し利用だけでなく、1回利用すると、なぜか、他の業者からも頻繁に勧誘があり、何件もの利用になってしまう様(自転車操業)は、まさしく闇金利用と同じです)。
そして、勤務先は判明していますので、もし、支払いをしない場合は、勤務先に連絡がいったりするケースもあります。
特徴としては、(通常のファクタリングは企業や自営業者が売掛金などを譲渡し、資金を得る手段として一般的ですが)給与ファクタリングは、スマホなどから簡単に申し込みができ、一般消費者である給与所得者が、「給与債権」という通常、譲渡したりはしない債権を「譲渡するかたち」でなされます。
給与ファクタリング業者の多くが、貸金業法などの脱法行為として行っているので、実質、違法業者といっていいと思います。
勤務先が倒産などで給与の支払いがなかった場合は、支払い不要になるメリットがあるなどと言いますが、そんなことが生じる確率はどれぐらいあるのか(ほとんどない)?
手数料を金利で考えると、どれぐらいになるか判断が必要です(多くが暴利です)。
連続利用、複数の業者利用(自転車操業)で、毎月の給与から、毎月、毎月数万円の手数料を、給与ファクタリング業者に延々と取られ続ける(アリ地獄)状態に、簡単に陥ってしまいます。
・・・
さて、 上記に出てきた「法テラス(日本司法支援センター)」ですが、
法テラス(日本司法支援センター)とは・・・
では、「国が設立した法的トラブル解決の総合案内所です」と記載されています。
法テラスでは、
弁護士や司法書士の費用を用意することが困難な方のために
相談料を代わりに支出したり、立替払いをする民事法律扶助の制度を設けています。
一定の収入以下の人が利用できます。
(例えば、一例、3人家族(配偶者の収入も加算)で、月の手取り額が、272,000円以下、生活保護上の一級地の場合、299,200円以下、これに家賃(住宅ローン)負担などがある場合、66,000円まで家賃等を加算することができます。阪神間は一級地なので、家賃等を加えると、月手取り36万円ぐらい以下であれば大丈夫ということになります)
その他、要件があります。
法テラスには司法書士や弁護士の報酬等の立替基準があり、
例えば、司法書士が書類作成などで関わる場合、
次のように費用が定められています。
法テラスの報酬等の立替基準
(事案によっては異なる場合があるかもしれません)
・破産申立(書類作成)
金105,000円(実費17,000円、報酬88,000円)
(ただし、裁判所への予納金は本人負担。生活保護受給者については、予納金も法テラスから支出されます)
・成年後見人等の申立(書類作成)
金7万円(実費15,000円、報酬55,000円)
・相続放棄申述(書類作成)
金37,500円(実費10,000円、報酬27,500円)
・任意整理(多重債務などで、相手と分割払い等の話し合いをする)
ただし、司法書士ができるのは、司法書士のうち、認定司法書士(「簡裁訴訟代理等関係業務」を行うことができる、特別研修を受け考査により認定を受けた司法書士)で、個別の債権の価額が140万円以内の場合になります。
交渉をする相手方の数に応じて、
1社 金43,000円(着手金33,000円、実費10,000円)
2社 金64,500円(着手金49,500円、実費15,000円)
3社 金86,000円(着手金66,000円、実費20,000円)
4社 金108,000円(着手金88,000円、実費20,000円)
5社 金135,000円(着手金110,000円、実費25,000円)
6社から10社 金179,000円(着手金154,000円、実費25,000円)
・・・任意整理の場合、通常、成功報酬は発生しませんので、この額になります。
給与ファクタリング被害の場合は、給与ファクタリング業者と交渉をしますので、(闇金と同様に考えると)これ(任意整理)にあてはまると思います。
ただし、消滅時効援用や違法業者対応の場合は、1社を0.5社と計算するなど、減額措置がとられたりしています(違法業者対応については、非常に困難な事例がある一方、電話のやりとりだけで対応終了となる事案も一定程度あるというのが理由)。中には困難事案として増額になる場合もあります。
給与ファクタリング業者との交渉は、違法業者対応になると思います。
など、など
この費用を法テラスが立て替えて、担当する司法書士や弁護士(法テラスと契約している司法書士や弁護士)に支払い、
依頼者は法テラスへ月5,000円程度ずつを償還していくことになります(生活保護受給者やそれに準ずるような場合は、免除申請をすることもできます)。
生活保護受給者については、事件終結まで償還が猶予され、免除申請をすれば(審査を経たうえ)、通常、償還免除となります。
昔のHP