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住宅ローンの付いた自宅を手放さずに債務整理(民事再生)

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2月10日

神戸バレンタイン・ラブランのハーフマラソンに参加

参加賞の一つにランの花をもらいました。

 

コラムを掲載していたHPが閉鎖されたので、

そこに記載していたコラムの一つをこちらに記載しました。

 

住宅ローンの付いた自宅を手放さずに債務整理

弁済が困難になった方の債務整理の方法の一つに「民事再生申立」(個人の方が対象のもの)というものがあります。

地方裁判所での手続になります。

 

細かい要件等は省略しますが、(大ざっぱな)イメージとしては、借金総額の5分の1(最低100万円)を3年間(特別な事情がある場合は5年まで延長できます)で分割弁済するというものです。残りは免除。

事情により返済が苦しくなった際、この手続きで(要件を満たせば)法律の力により債務を圧縮した上、分割弁済の債務整理が可能となります。

 

例えば、借金総額が500万円ある方は、その5分の1である100万円(最低弁済額)を原則3年間で分割弁済する。

ですから、この場合、毎月3万円程度弁済できる方はこの民事再生が利用できるということになります。法律の力で借金を5分の1にできるというものです。

 

借金総額が600万円ある方は、その5分の1である120万円(最低弁済額)を原則3年間で分割弁済する。

 

ただし、例えば借金総額が300万円の方は、その5分の1である60万円ではなく100万円(最低弁済額)を原則3年間で分割弁済することになります。

借金総額の5分の1が100万円未満の場合、100万円になります。

ですから、借金総額が100万円という方は民事再生をするメリットはあまりないということになります。

 

そして、破産と異なり、財産を処分する必要はありません。

財産は持っていてもかまわないということです。

ですから、失いたくない財産がある場合は、破産ではなく、この民事再生の方を選択することがあります。

 

ただし、財産がある方でこの民事再生を選択した場合、その「財産分」は弁済しなければならないとなっています。例えば、先ほどの例で借金総額が500万円ある方で、その5分の1の100万円を分割弁済するのですが、失いたくない財産がその額より多い200万円であった場合、この200万円の財産は持っていてもいいのですが、弁済する借金額は100万円ではなく、この200万円になります。200万円を原則3年間で分割弁済となります。

最低弁済額の5分の1(ただし、それが100万円未満の場合、100万円)より財産が多い場合、その財産額が弁済額になります。破産するより有利にならないようになっています。

このように、財産は処分せず持っていてもいいのですが、その財産が高額の場合、弁済しなければならない額が増えることがありますので注意が必要です。

 

この分割弁済の内容を再生計画といいます。上記述べたのは、あくまで「最低」弁済額のことで、再生計画でそれより弁済額を増やすことは(弁済する側にとって不利になりますが、債権者にとっては有利ですので)もちろん可能です。

 

財産を処分しなくてもよいとはいっても、住宅ローンが付いた自宅がある場合、住宅ローン残がまだまだ残っていて、その住宅ローン債権も減額対象の再生債権に含めると、自宅は手放さざるを得なくなります。しかし、民事再生には特則があり、(自宅は手放さず)住宅ローンは支払いながら、他の借金について、上記のような減額した上、分割弁済が可能になっています。自宅を守ることができるというものです。

住宅ローンが付いた自宅を所有している方が破産をすると、その自宅は手放すことになりますが、この民事再生の特則を利用した場合、自宅を手放さずに債務整理をすることができます。(ただし、いろいろ要件はあり、また住宅ローンは減額なく全額弁済することになります)

 

ちなみに、前述の失いたくない財産ですが、それは、(多額の)現金とか預貯金はあまり考えられないので、どういうものがあるかというと、例えば、長年住宅ローンを弁済しており、自宅不動産の価格より住宅ローン残の方が少なくなっているケース、その差額が財産となります。 例えば、(自宅時価が1000万円、住宅ローン残が800万円)その差額が200万円(計算は便宜上単純化しています)とすると、この自宅は失いたくない財産で、住宅ローンは支払いながら他の借金は減額するという、前記の民事再生の住宅ローンの特則を利用し、自宅を守る場合、住宅ローンを除く借金が500万円ある場合、その5分の1の100万円を分割弁済するのではなく、その差額の財産分の200万円を分割弁済するということになります。こういうケースが考えられます。 住宅ローンの残が少なくなっているケースは注意が必要です。 ただ実際は、自宅不動産の時価より住宅ローン残の方が高くなっている、いわゆるオーバーローンになっているケースがほとんどですが(オーバーローンの場合はその財産評価は0円になります)。

 

注意

個人の民事再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生があり、それぞれ適用要件が異なるなど、細かいところは省略して述べています。

 

司法書士 酒井篤治

 

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債務整理の講義録 平成26年

http://www.amy.hi-ho.ne.jp/sakai-siho/kougirokusaimu.pdf