司法書士とくの日記(ブログ)

司法書士業務、マラソン、その他

根気よく

ある破産案件。
(本人が特定できないように具体的な事実関係は記載しません)


いくつかの債権者が不明。
「請求書は届いていないのですか。」
住民票を移しておらず、また、転送手続をしていないので、届いていないとのこと。
私「郵便物が届くように郵便局で転送手続をし、住民票も現在の住所へ移してください。」
依頼者「そんなことはできません。取立てが怖いですから。」
私「私(司法書士)が債務整理を受任しましたので、取立てはありませんし、
このままでは債権者が判りませんから」
依頼者「(現在、同居している)息子のところへ請求書が届くのは困ります。
息子に迷惑はかけられませんから、逃げることにします。」
私「逃げるって、どこへ逃げるのですか。」
依頼者「・・・」


自己破産申立てする際は、申立人の預貯金通帳(コピー)などを裁判所へ提出します。
おおむね1年半ぐらいの口座履歴を求められます。
切り替えで新しい通帳しかなく、古い通帳を処分・紛失している場合は、
銀行で口座明細を取り寄せてもらうことになります。
また、おまとめ分(長期間記帳をしていない場合、通帳節約のため、
その間の出入金をまとめて記帳されることがある)がある場合も
その間の口座明細を取り寄せる必要があります。


私「預金口座の記帳がおまとめで1年分の合計額の出入金しかありませんので、
この間の口座明細を銀行で取り寄せてください。」
銀行へ行ってもらう。
依頼者「銀行の窓口で聞くと、これで記帳されてますと言われました。」
私「いや、まとめて記帳されているのでその間の明細が必要です。
いついくら入金があり、いついくら出金があったか確認する必要がありますので、
それを説明して銀行で口座明細を請求してください。」
何日かして。
依頼者「電話で問い合わせたところ費用が1万円以上かかると言われました。」
私「えっ!そんなにかかるのですか?銀行でかってにおまとめした分の明細ですよ。
もう一度、銀行窓口へ行って、確認してください」
依頼者「もう、銀行へ行くのいやです。こんな手間がかかのであれば破産せずに逃げます。」
私「・・・」
なんとか説得して銀行へ行ってもらう。
依頼者「混んでいて、銀行の人に嫌な顔をされたので、やめました。」
私「あの、口座の明細を取るのはそんなにむずかしいことではないので
がんばって取ってきてください。」
依頼者「やっぱり、逃げます。」
私「逃げられる状況でもないでしょう。そうなげやりにならずに
もう一度、銀行へ行ってください。私の方からも依頼書を作成しますので」
司法書士名で依頼書を作成し、それを持たせて銀行へ行ってもらう。
依頼者「取れました。費用は500円でした。」


自己破産申立てする際は、同居者の協力が必要となる場合があります。
私「同居されている息子さんの収入の分かる書類が必要ですので、
息子さんに協力してもらう必要があります。また、家計表を作成するため、
家賃や公共料金の領収書が必要です。家計管理は息子さんがされていますので、
その提出など息子さんにお願いしてください。」
依頼者「息子にそんなこと頼めません。」
私「私からも説明しますので、頼んでみてください。」
依頼者「息子に迷惑がかかるのであれば、破産せずに逃げます。」
私「またそんなこと言って、息子さんに迷惑はかかりませんから、
むしろ、あなたが破産せず逃げたほうがよっぽと息子さんに
迷惑がかかりますよ。」


借金した事情につき不明な点が多い。
私「もう少し思い出してもらわないとわかりません。」
依頼者「頭がバカになっていて、だめです。」
私「一つ一つ順をおって確認していきますので、できるだけ
思い出すようにしてくださいね。」
依頼者「頭が痛いので、破産せずに逃げます。」
私「逃げます、逃げますって、本当に破産しなくてもよいのですか。」
依頼者「・・・」
私「こつこつやっていけば、最終的にはできますので、がんばりましょう。」


破産申立てに必要なことを一つ一つのいやがるので、
その都度、説得が必要となる。


根気よく(2)
http://d.hatena.ne.jp/tokucyan-siho/20080310