保管申請書の作成など、自筆証書遺言の法務局への保管のお手伝いをしました。
相続人へ相続させる旨の遺言で、受遺者や遺言執行者の記載のない遺言なので(死亡時の通知の対象者もおらず)比較的、保管申請書作成が簡単な遺言でした。
保管申請書は、PDFで作成できるように法務省のHPに掲載されています。
自筆証書遺言書自体を法務局へ提出してしまうので(法務局から氏名、生年月日、保管番号などが記載された保管証は交付されますが、遺言書の控えが交付される訳ではありませんので)、自分自身で、遺言書のコピーなど控えを取っておかないと、後でどのような遺言をしたか確認ができません。手元にコピーなどがなく、どのような遺言書を保管したか確認したい場合は、遺言者本人が法務局で閲覧をすることになります(法務局で閲覧ができるのは遺言者本人のみになります)。
さて、
自筆証書遺言の法務局への保管制度について2 - 司法書士とくの日記(ブログ)
自筆証書遺言保管制度(自筆証書を法務局で保管してもらう制度)を利用した場合
遺言者がお亡くなりになった後、相続人は、法務局に、遺言書保管事実証明書や、(遺言の内容が判る)「遺言書情報証明書」の交付請求ができるようになります。
そして、相続人が「遺言書情報証明書」の交付を受けたり、閲覧をした場合、法務局から、(その請求した者以外の)遺言者の相続人全員や、受遺者、遺言執行者へ遺言が保管されている旨の通知がなされます。
この点が「公正証書遺言」と異なる一つになります。
例えば、
(長年まったく疎遠となっている前妻の子がいるが)
再婚をして、その再婚をした妻に遺産を承継させたいと思った場合、
「(再婚した)妻へ相続させる」という遺言を作成することになります。
これを「自筆証書遺言」ですると、法務局へ保管しない場合は、家庭裁判所の検認が必要となりますので、他の相続人(この場合は、前妻の子)へも家庭裁判所から通知がなされます。また、法務局への保管制度を利用した場合も、法務局から通知がなされます。
いずれにせよ他の相続人(遺留分権利がある前妻の子)に死亡した事実や遺言の存在が判明することになります。
そして、遺留分を侵害している場合は、遺留分侵害額請求(金銭請求)がなされる可能性が生じてきます。
これを公正証書遺言でした場合は、相続人である前妻の子に対して、公証人役場、家庭裁判所、法務局から通知されるようなことはありませんので、(ケースによっては)この(まったく疎遠となっている)前妻の子に知られずに相続手続きが可能となります(なんらかのきっかけで死亡の事実を知られた場合は別ですが・・・)。
きちんと、前妻の子へも知らせ、請求があれば遺留分は支払うという判断もありますが、ケースによっては(それが適切かどうかは別にして)、この辺の配慮が働いて、「公正証書遺言」を選択される場合もあるように思われます。
追
ただし、遺言執行者が指定されているなど、遺言執行者がある場合は、遺言執行者は法律の義務として相続人全員(遺留分権利者はもちろん、遺留分のない兄弟姉妹も含むとされています)に遺言の内容を知らせる義務があります。遺言執行者が指定されていないなど、遺言執行者がない場合は、そのようなことはありません。